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第23章 知らなかったこと


『は…ッ、……ふ、ぅ…っ』

痛いのなんて慣れてるはずなのに。
その痛みの先にさえ、それはない。

私の求めるそれが、そこにない。

今までだって何人もいた…口先だけで私に愛や情を語る人間は。
だけどあの人は違うと素直に感じることが出来た…そしてそれは本当に心からの言葉だった。

なのに、どうしてこうなった?
どうして私は…あの人にとっての悪い子になってしまった?

一番分からないことなのに、どうして誰も私に教えてくれないの?
どうしたら、愛して欲しい人に愛してもらえるの?

私が知ってる愛され方なんて…あんな方法、拒絶されてる相手になんか使えるわけがない。

分からない、どうすればいい子になれるのか。
ねえ、教えてよ。
ねえ、会わせてよ。

ねえ…また、あの頃みたいに私の事、安心させてよ。

『…ッ、なんで…っ!?なん、で……っ、まだダメなの!?いつまで我慢したらいいの!!?』

逃げるべき居場所なんて作ってこなかった…逃げたいはずの居場所になんて、やはり帰してなんてもらえなかった。

『私何もしてないじゃない…っ、なんで私なの!?なんで私がいけない子にならなきゃいけなかったの!!?』

何もかも、私のせいじゃなかったはずなのに。
当の本人は永久に監禁…そんな生活の方がよっぽどマシだった。

『生き地獄でしかないじゃない…ッ!!!!!』

一人なんかじゃ…独りなんかじゃ…

頑張っていい子になって、ここまで抗うこともなく大人しくしていたはずなのに。
まだ許してもらえない…まだ帰してもらえない。

誰が望んでこんな世界にやって来た?
誰が望んであの世界から出る羽目になった?

『なんで…っ、なんで誰も、最期まで一緒にいてくれないの…ッ?』

____なら、俺がいてやろうか?

響いた声に、振り向くこともなくただ声を発する。

『…笑えない冗談言わないで…誰が守るのよ、そんな保証なんかない口約束』

「守らせることは出来るだろう?…分けられるんだろう?」

『……笑いに来た?ねえ…そんなに面白い?…滑稽よね、家にも…いたい場所にも戻れないの。あそこに帰れさえすれば、なんにも寂しがることなんか…』

「…随分と素直になったじゃないか」

口をつぐんで、気が抜ける。
それと一緒に扉も消える。

『……なんで来るの…?なんで…言わせるの…?』

なんで分かるの
___織田作
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