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第23章 知らなかったこと


頭の中に鳴り響く警告はシンプルに二つ。
どうしよう…そして、これは拙い。

どうすればいい…解決策が分からない。
そもそも何が問題なのかも分からない。

いや、私という存在そのものがいけないことであるのは大前提であったはずだ。
それに輪をかけていけないことをしてしまった…?

もう一つ…このままいくと、何かが拙い。

「意味、って…ど、うして?…蝶ちゃん、君が生きていくことは、誰かに邪魔をされていいようなものでも誰かが邪魔していいようなものでもないはずなのだよ?」

『だ、って…だって、じゃあなんで今生きてるの…?なんで今死んでないの…なんでまだ死ねないの…?中也、さんが悲しくなるからって…それで…それで、生きてるのに…』

あの人に嫌われたら、意味がないじゃない。
あの人に好かれていないのなら、私がいなくなったところであの人は悲しまないじゃない。

「だから、さっきあいつがああ言ったのは言い過ぎただけで、本当にそう思ってなんか…!!」

私の目を見て、太宰さんは言葉を紡ぐのをやめた。

本当に思っていないようなことを、あの人が私に向かって言うはずがないでしょう?
…私の目が、嘘を見抜けないはずがないでしょう?

『……私が、どれだけ見てきたと…』

「…蝶ちゃん…?」

『…い、い……なんか、もう…いい』

私の身体から弾かれるように壁が作用する。
意図していたわけじゃあないのに…使うつもりなんかなかったのに。

歩けないなら、移動すればいい…移し替えていけばいい。
ただそれだけ。

白い扉を作って中に入ってしまえば、もう誰の声だって聞かなくてすむから。

どこに行くかなんて考えもせずに飛び込んだ扉。
繋がっていたのは拠点の屋上…場所が同じだけなのに、少し前までのあの人のことが頭の中から離れない。

そうだ、そもそもこの世界に私が存在してしまっていることそのものが間違いだったんだ。
元いた世界にいないのが、そもそもおかしなことなはずなんだもの…だって、私は何も悪いことなんてしていないのだから。

なのに帰れなくなって、こんな世界にたどりついて…そこで出逢ったあの人に嫌われて、どうしてこの先生き続けていこうと考えられる?

作っては指先から腕にかけて激痛の走る扉が消えていく。
ダメだ、やっぱり安定しない…手で触れただけで皮膚が切れてしまう。

帰りたい…帰りたい……
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