第23章 知らなかったこと
『…私、死んだんですか…?』
「いいや、ちゃんと…生きてるよ。……今、この場所でモニタに繋がっているのが証拠だろう」
『……目、覚めたかなんて…そんな大袈裟な』
私なら、心配しなくても大丈夫なのに。
言おうとしたのをなんとか我慢した。
それは言わない約束だから。
理由がまだちゃんと分かりきっているわけではないけれど、それでも中也さんが悲しむことだと言っていたから。
「大袈裟じゃないんだよ蝶ちゃん、よく聞いて?…君が意識を取り戻すまで、一週間以上が既に経っているのだよ」
森さんから放たれた言葉に目を丸くする。
『一週間以上…って……良かった、一ヶ月は経ってなくて』
「「!!?」」
『一週間くらいなら…“慣れてます”』
「……おい糞太宰、“そいつ”に伝えておけ…暫く俺と関わるなって」
自分の言葉の次に扉の外から聞こえた声。
私が今、最も欲していたはずのその声は…酷く冷たいものだった。
慣れていたはずの作り笑いも消え失せて、表情という表情が作れなくなる。
『…中也、さん…?…あ、…私、外套…返さな____ッ、…?』
寝台から降りると身体に力が入らずに崩れ落ちる。
「蝶ちゃん!!?…っ、中也…君、こんな時くらい怒らないでいてあげても…」
「……こんな時だから頭にきてんだろうが…勿論ちゃんと面倒は見るし生活もさせる。ただ、必要以上に俺に暫く構うんじゃねえ…何をしでかしちまうか分からねえから」
ほんの少しの殺気に背筋が凍りついた気がした。
『…蝶、の事…いらなくなった…?…中也さ___』
「___…あれだけ言ったのに微塵も分かっちゃいねえお前は、俺は嫌いだ」
心臓が握り潰されたような感覚。
どうしよう…どうしよう、どうしよう。
中也さんに、嫌いと言わせた…言わせてしまった。
どうすればいい?
どうすれば、許してもらえる?
また好きになってもらえる?
「中也君ッ、言葉選びには気をつけたまえ!!!相手は蝶ちゃんなのだよ!!?」
「…やっぱ暫く関わらねえほうがよさそうなんで、ここ離れます俺…後、任せます」
『……ど、しよ…?…な、んで…わた、し…?』
「!…蝶ちゃん?…間に受けちゃいけないよ、君の事が心から嫌いなら、あいつはわざわざ君の事を気にしてここまで足を運んだりなんか…」
『………生きてる意味…なくなっちゃう』