第23章 知らなかったこと
相手に目をつけられたかと思えば、すぐに何かに引き寄せられるように身体が引っ張られる。
『!?っ…?』
「ほぉ…これはまた可愛らしいお嬢さんだ。…上の三人は?」
『!……言ったら、どうするつもりですか…?』
「…いいや?どの道変わらん…君のような子なら喜んで可愛がってあげよう」
この目を私は知っている…この雰囲気を、私は知っている。
相手の腕から抜け出すべく能力を使って移動すれば、目を丸くして賞賛の拍手を送られる。
「まさか抜け出されてしまうとは…成程、テレポーターか。優秀な能力だ……そこの二人とは違ってな」
『どういうこと?』
「そのままの意味さ…そこの男が俺の異能を無効化していればまだ良かったんだろうが……体術一つでそのザマだ。そしてそっちのそこそこ頑丈そうな奴は…」
勝手に自滅していってくれちまってるからなぁ…
『…あなたの異能、何か変ね?』
「!…っと、危ないなぁ…そんなことしちゃいけないだろう?傷つくのは君なのに」
実弾で男を…男の頬に掠れるように、打った。
しかし、その弾丸は弾き返されたように私の元へと同じ威力で返される。
『反発力…というよりは、カウンター…?』
「!!もうそこまで見抜くか、大したもんだ!」
『…だってあなたと目が合った時、私少しだけ遠ざかったはずだもの』
「蝶、とりあえず太宰の野郎を起こしてとっとと戻れ!!そいつさえ起きれば後はなんとか___」
『へ…、ッ…ぁ…』
カウンター…別の世界で、異能力という名前ではなかったけれど、それと同じ力を有する人間と対峙したことならある。
そうか…これは確かに厄介だ。
特に、中也さんのように強い人であれば尚更。
相手が突然目の前に迫ってきたかと思えば、胸倉を掴まれて何かを見せられる。
「これはなんだと思う?」
何か…いや、それは私のよく知る大嫌いな道具であって。
『注、射…器…ッ?』
「…もしかして怖いのか?…ははっ、大丈夫だ、すぐに終わる…何、毒じゃないから安心しろ」
少し首元がチクッとするだけだ
なんて囁かれた言葉に身体がうまく動かせなくなる。
あれ、なんで私抵抗しないの?
なんで私…能力の使い方が分からないの?
「蝶!!!!そこから抜け出せ!!お前ならできるだろ!!?」
『中…也、さ…ッ、あ゛…ッく、ぅ…ぁ…っ!?』
嫌いな感触…