第23章 知らなかったこと
向かった先には大きなビル。
車なんかの移動手段がなくとも、私がいればそれだけで確実に…それもバレることなく移動が出来る。
基本的には三人で固まって動き、前衛で中也さんが…そしてそれを私が能力でサポートしながら、太宰さんの指示で動いていく。
「戦車…?まさかほんとに隠し持ってたなんて…これ、屋内で使われ始めると厄介だね」
「なら先に壊しとくか?」
「…いや、相手に気付かれるよりはまだいい。中也がいれば物理攻撃なんか意味が無いも同然だし…今気付かれるよりは、相手の戦力を削ってから気付かれた方がよっぽど合理的だ」
何か、違和感を感じる。
任務中といえども、この二人がここまで言い合いもなしに行動を共にするだなんて。
それに、やけに私と話さないような…
「資料によれば、総勢五百人程度…なわけだけど、更には相手は武装集団ときた。軍事兵器まで持ち合わせてるけどどうする?遊んであげる?」
「馬鹿言え、んなことしてて遅くなったら蝶の生活習慣が余計に乱れちまうだろ」
『…そこなんですか』
この人は全く…いつもそういうことばかり。
下の階から順番に…なんて正攻法はとりはしない。
何故なら、ここには今私がいる…そして組んでいるのはこの二人。
大人数の組織を相手にするなら…出来てしまうのだから、手っ取り早く相手を混乱させるに限る。
「じゃあ蝶、頼むわ…最上階!!」
「とっととボスからなんて、貪欲だねぇ中也」
『作りますよ?…開けるタイミングは中也さんに任せます』
白い蝶を集めて扉を作れば、ビルの最上階の窓の外…つまりは空中なのだが。
私の能力があれば、わざわざ窓を破壊せずとも、認識したところに移動できる。
扉を開ければ窓はガラス張りで、中の様子は丸見え。
この組織のトップらしき相手と、それから重鎮らしき体格のいい三人の男と。
ボスが異能持ちであることは資料に記載されてはいたが、それ以外はどうやら情報が出回っていないらしいし。
私がハッキングをかけても出てこなかったほどだ、恐らくポートマフィアレベルに情報には力を入れているのだろう。
中也さんをボスの前に、それからそれと背中合わせになるように私と太宰さんも移動させ、そこで少し遅れて相手が反応を見せれば…それが任務開始の合図。
「……!!?な、っ…!!!?誰だ貴__」
言い切る前に、ビルの底まで床が崩れる