第23章 知らなかったこと
中也さんとの生活が始まって半年ほど経った頃。
そろそろ生活にも中也さん以外の人達にも慣れてきた、そんな時。
『任務…って、……こんな内容のものを?二人で…?』
「うちの首領もここまで頭がいかれちまってるらしい…普通こんな規模の組織を潰すんなら、太宰の野郎と組ませるのが妥当だろうに」
珍しく、中也さんの口から太宰さんの名前が出てくるほど。
それほどまでに、内容が少し酷なのだ。
敵組織の“殲滅”だなんて…それを二人で行えですって?
私はいい、何かあってもなんとかなるような身体だから。
でもこの人はそうじゃない。
「…仕方がねえ、気に食わねえが頼みに行ってみっか」
『!頼みに…って…!?だ、太宰さんに!?』
あの中也さんが…?
「さすがにこの規模の依頼にもなると、策もなしに突撃すりゃあ…下手を打つかもしれねえしな」
『…作戦立案以外に、太宰さんに応援要請なんて』
本当に珍しい。
この人の言う策というのは、一見作戦の事のように思えるが…恐らくそれは、そうじゃない。
ここ数ヶ月で私もよく中也さんと二人で任務をこなしていたからわかる。
作戦立案に関しては、恐らく太宰さんにわざわざ頼まなくとも、この人は私を頼ってくれるから。
しかし今中也さんは、たしかに策と口にした。
太宰さんの執務室に入るや否や、二人して怪訝そうな顔で嫌味を言い合う…のだけれど、太宰さんの方も様子が少しおかしいような。
「……それはあれだよ、君…いいように使われそうだねえ、君も…蝶ちゃんも」
『!』
「………そこでだ、太宰…お前、この後暇か?暇だよな?」
「私今から書類仕事が「普段してねえ奴が何ほざいてやがんだよ」…冗談だよ」
いいように使われそう…どういうこと?
話が掴めない私の元に太宰さんが歩いてきて、腰を屈めて私と目線を合わせる。
「いいかい?蝶ちゃん…今回の任務、間違っても無茶はしないこと。これは恐らく、本来君ではなく私が赴くはずだった任務だろう……私も同行するが、一つだけ絶対に約束してほしいことがある」
____私が拠点に戻ってくれと言ったら、すぐに拠点まで戻ること。
言われた約束の内容に目を丸くした。
中也さんの方を見てみても…こちらを見るどころかどこか表情も浮かないし。
『…どうして?それなら、二人も「私達は大丈夫だから」…はい…』