第22章 云いたかったこと
「それはそれは有意義なクリスマスが過ごせたようで、なによりだよ…ねえ中也?良かったねえ本当…色々と頑張ってた甲斐あったみたいで」
「うるっっせぇな手前は!!?俺じゃなくて頑張ったのはさ……っ、し、仕事頑張っていい子にしてた蝶だろうがよ」
「中也君ほんとにお疲れ様…いやあ、二人して酔っちゃってた時はどうなるものかと思ってたけど……まさか蝶ちゃんに軽く睡眠剤を盛ってまでプレゼント用意してたなんて…」
「ああああああもうやめてください森さんまで…っ、だって手紙であんなこと書かれてたら何用意すればいいか分からないじゃないですか!?……結局あいつが喜びそうなものにしましたけど」
「「本っ当に健気だよねぇ蝶ちゃん…」」
横浜のサンタは異能持ち…どこにだって入っていける。
そんなわけはない…そんなサンタ、あいつの夢を壊さねえために吐いた虚言だ。
太宰がいいように誘導してくれたからまあ説明はしやすかったが…まさか何百年も生きてきた人間があそこまで純粋だと誰が思う?
経験が経験なだけになんとも言えない面も確かにありはしたが、それでもだ…健気、その一言に尽きる。
何だよ、俺と楽しく過ごしたいって…プレゼント強請れっつうのサンタにくらい。
あああああクソ可愛い、なんなんだあいつは。
それに挙句の果てにはプロポーズ紛いなことまでされちまうし…何が大人になったら俺の嫁になるだ、可愛いかよ、知ってた。
いや、もっと良い奴いるからこのご時世…お前みたいな奴にこんな男は釣り合わな過ぎる……まあ他の誰かにやるつもりはないわけだが。
あれだろう?
“私、大きくなったらパパのお嫁さんになるの!”っていう娘あるあるだろ?
かっこよく見えるもんだし大好きになるもんだもんな、親って……いや、俺の場合どうなんだ?
いやいやいや、あの蝶さんだぞ?
早まるな俺、勘違いするな俺…!!
「…さっきから百面相してて顔がうるさいのだけれど?」
「百面相なんかしてねえよ!!!」
「よっぽど蝶ちゃんと楽しいことでもあったんだろうね…いやあ、中也君てばほんとわかりやすい」
「!!?まさか蝶にサンタの正体なんかバレて…!!?」
「「それは大丈夫でしょ」」
あいつの純情は俺が守る、OK。
勿論あいつの望みも俺が叶える、OK。
____俺の勝手であいつに男として迫らないようにだけは注意しねえとだが。