第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「よーし、んじゃ心配してくれてた広津さんにも見つけましたって連絡入れっからな。ゆっくりと詳細は聞いてやる」
『えっ…中也さん、広津さんに色々と聞いてからきたんじゃ』
「俺が聞いたのは、お前が任務で一緒になって帰ってきてから一悶着あってどっか行っちまったって事だけだ。詳しい事聞く前に急いでここに来たんだよ」
私に抱き着かれてるのにも関わらず、保冷剤を押さえていない方の手で器用に携帯を弄る。
なんて器用なの中也さん、そんなところも素敵です。
『…でもやだなぁ』
「あ?何がだよ」
『だって、折角今私が中也さんの事独り占めにしてるのに…広津さんだけならともかくあの絆創膏男まで来るとか』
絆創膏男と言ってやれば一瞬考え込んだ中也さんだったが、すぐに誰なのか見当がついたようで、肩を震わせて笑いを堪えている。
「おまっ、絆創膏男って…プッ、相当折り合い悪かったんだなあいつと。じゃなけりゃそんな呼び方しねえ。つか蝶より年上なのにこんだけ敵視されてるとかほんと珍しいぜ」
『あの人本当に失礼、中也さんとは大違い』
それを言うとさらに彼のツボに入ったようで、笑い声が漏れだした。
しかし、今中也さんの頭の中にはあの男がいっぱいいるのかと思って悔しくなって、もっと強く抱き着けば、少し大人しくなる中也さん。
「ちょ、蝶さんギブだギブ、それ以上されると俺がキツい」
『あんな人に中也さんは渡さないんだから』
「待て待て待て、なんかおかしいぞそれは、何で俺が立原に…」
中也さんが言いかけたところで、コホンと咳払いが聞こえた。
「えー…幹部、お邪魔になるかもしれませんが」
「だ、だだ大丈夫だよ広津さん!それに立原も来てくれたみてえだし…蝶、そろそろ離れ…………あー…ほんのちょっとだ、ちょっとだけお願いしてもいいですか蝶さん」
『やだ。こうしたの中也さん。責任とってくっつかれてて』
私が言えば反論出来なくなったのか、保冷剤を持ってない方の手で背中を撫でられる。
勿論、中也さんのせいでまた中也さん症候群が発症したからというのもあるが、何せ今はこのぼろぼろな顔を中也さん以外の人に見せたくなかった。
「……すまなえが広津さん、まあこんな具合だから、このまま頼む」
「相変わらずの様子で…懐かしい光景が見れて私も嬉しいですよ」
絆創膏男の声は聞こえなかった。