第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「……悪い、強く叩きすぎた。赤くなってる…腫れはしねえと思うが、一応冷やしてっ、………蝶?」
『いい、このままで…このままがいい』
私から離れて保冷剤を取りに行こうとする中也さんを再び抱きしめて、離さないようにする。
「このままがいいって…お前目だってその調子じゃ赤くなんぞ。黙って大人しく言う事聞いとけって」
『やだ、昨日何でも好きなこと聞くって言った。……それ使う』
「……なら、さっき馬鹿なことしようとしたお前への仕置きだ。俺の言う通りにちゃんと冷やしとけ」
じゃないと俺が嫌なんだよと言って、叩かれた左頬を優しく、優しく彼の手が撫でる。
今回は彼に悪意はないようだが、それでもやっぱり擽ったい。
『ん、っ……分かった。………私を怒って叩いても、中也さんの手は怖くないよ。好き』
擽ったいけれど、私を怒ってくれたこの手が。
そしてまた私に優しくしてくれるこの手が、大好き。
中也さんの手に自分の手を重ねて、何故そうしたのかは分からないが、軽く、ほんの一瞬触れただけだけど、口付けを落とす。
「!お前なぁ……」
全く、と呆れた様子で彼の手に添えていた私の左手を取り、今度は長く、熱い口付けが落とされる。
どれ位の間だっただろうか。
とても長くて永遠にも続くように感じられたような…すぐに終わってしまったような。
私の手から唇を離して、伏し目がちになって間を置いて。
「…普通、逆だろ」
まただ、私の知らなかった中也さん。
大人っぽくて、色っぽくて…男の人を感じさせるあの中也さんだ。
そんな中也さんに返事も出来ず、彼はその内に保冷剤を取りに行って布を巻き、それを私の頬にあてた。
『ちょっ…中也さん、それくらい私で出来ます……』
恥ずかしくなって目は合わせられないが、保冷剤を自分で押さえようと手を動かした。
しかし、中也さんは私の手をとって、あろう事か彼の方へと引き寄せる。
『え、っ…わっ、中也さん……?』
「なんだよ、甘え足りないわけじゃねえのか?なら仕方ねえな、もう何でも聞くってのはなしにして…」
『……私が甘えたくなるの、分かっててやってるでしょ。ずるいです』
彼に保冷剤をあてられたまま、首元に抱き着いた。
「ははっ、でも好きだろ。お前」
『中也さんじゃなかったら絶対しませんよ』
「そりゃ安心だ」
私も、ここが一番安心する。