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第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ


なくなっちゃえば、楽になれる?
消してしまえば、ただの“普通の女の子”になれる?

馬鹿げた事だなんて分かってる。
記憶を消したって、私は私。
その本質は変わらない。

だけど、あんな思い出に引きずられてばっかりで、これでもまた中也さんを苦しめちゃうくらいなら…

全部リセットして、なんにも怖がらずに、一人でも生きていけるのなら…

そうすれば、中也さんのこと、傷付けなくって済むじゃない。
私が全部忘れちゃったら、中也さんと一緒になる事に執着するこの体は、どこへでも行けるようになる。

____中也さんに出会う前に戻るだけになる。


白石 蝶から、ただの人間…人間なんて、そんな事を言うのは烏滸がましいかしら。
私が無事な状態で、あの人から離れる事さえ出来たら。

私が中也さんを縛り付けなければ、きっとあの人だって自由になれる。


『…………つくづく私って嫌な奴』


そうだよ、私が重荷になってたんじゃない。
さっきだって広津さん言ってたもん、中也さんが私の事探してたって。

私の無事を中也さんが分かっていれば、そんな事にはならなくて済む。


嫌な考えにどんどん引きずり込まれていく。
思い付いてからの私は妙に行動に移るのがスムーズだった。

もう何にも考えなくていい。
もう何にも聞かなくていい。
もう何にも思い出さなくていい。

私の脳にあるこのたくさんの“情報”を媒介させるための器…誰かにこんな事、お願いなんて出来ない。
それならば、情報の処理能力に長けるものに移し替えればいい。

このご時世、何処にでもありふれている情報端末機器……携帯電話。
私のそれに、外付けの小型ハードウェアを接続し、容量を確保する。

後は私が能力を使って移し替えれば完了する。

なんだ、簡単な事だったじゃない。
ちょっと私が我慢して、中也さんと離れる勇気をもつだけ。
わがまま言わずに、欲をもたなければよかっただけ。

あの人に執着して、縋りつかなければよかっただけ。


『ああもう、なんでこんな時に思い出すかなあ』

中也さんの笑った顔、心配した顔、照れてる顔。

一緒に寝た事、ご飯を食べた事、ご飯を食べてもらった事。

抱きしめてもらって、撫でてもらって、たまに意地悪されて

____そして初めてのキスをした。

震える手を無理やり動かして、自身の頭に添える。

『…バイバイ』
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