第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
医務室に着いてから、昨日輸血の為に横になっていた寝台に座り込み、膝に顔を埋めて縮こまる。
あの事を思い出すと、もう何もかもが恐ろしく感じてしまって。
自分以外の全てのものが、怖いものに思えてしまって。
そういえば、昨日だって結局中也さんのこと苦しめただけだったじゃん、私。
あの人は優しいからああ言ってくれてるけれど、その実私ときたら、本当に迷惑しかかけてない。
もしも半年前に、あの原因不明のシステムダウンが起こらなかったら。
もしもあの時、私の能力が進化していなければ。
私は探偵社で太宰さんに再会することも出来ていなかった。
その二つの条件が奇跡的に揃っていたからこその今なのだから。
『………寒い』
もしも未だ、あの場所に捕まったまんまだったら。
確かに私は辛かっただろう。
それこそ何回か死んでいたっておかしくはないと言っても過言じゃないくらいには。
確かに四年前、私は自分のせいで捕まった。
けれど今の現状を考えてみろ、何なんだ私は。
結局昨日の事でだって、勝手な独断行動で中也さんを苦しめているじゃないか。
もしまだ私が、あの冷たい実験施設に捕えられたままだったなら。
それが何度も頭に浮かぶ。
怖い、辛い、苦しい、確かにそう。
でも、中也さんの邪魔にはもうならずに済んでいたんじゃないの?
私がいなくなっていたことで、確かに中也さんを苦しめている面もあった。
だけど、一緒にいたって苦しめちゃうんじゃあ、もうどうすればいいのか分かんないよ。
『ふ、っ……ぅっ、…』
どこにもいけなくなった感情が雫となって零れていく。
結局私って何なんだろう。
一緒にいたい?いたってあの人を苦しめてるだけの子供なのに?
じゃあ離れる?そんな勇気もなくて結局あの人に縋りつくくせに?
私はどこにいればいいの?
私はどこにいったらいいの?
こんな人間が優しいあの人のことを好きですって?
一体どの口が言ってるの。
溢れて止まない自分の嫌なところ。
そして鮮明に思い出されるあの場所とあそこでの生活。
迷惑なんて分かってる、苦しめてるって分かってる。
でも仕方ないじゃない。
冷たいところは…怖いところはもう嫌なんだもの。
暖かい中也さんの元にいたいんだもの。
消したくっても消えないあの記憶。
もういっその事、全部なくなっちゃえば楽になれるのに。