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第22章 云いたかったこと


「彼女の事が少し気になって乱歩さんに話をしてみたら、そこから話が膨らんでいってしまってね」

最初は乱歩さん…そしてその乱歩さんの提案で、この間会ったあの花袋さんに話がいった。
彼の異能で、調べた…いや、見たのだ。

研究施設の外にあった監視カメラを…その日、その時の映像を。

「蝶ちゃん、君がここに現れた時はちゃんと私が覚えている。…その日から遡ればすぐに見つかったよ…茅野ちゃんが、ちゃんと君を外に連れ出してくれていた」

『………連れ出して、って…』

特殊な水槽という檻の中で、身動きも取れずに放電されていたあの時。
変な毒だって注入されてて、なんとか死にはしなかったけれど、あのままだったらどうなっていたことか。

溺死も感電死も毒死もショック死もすることなく、その前に誰かが止めてくれた…助けてくれた。
気がついた時には施設の外で横になっていて、誰かの服まで着せられていた。

そして…壊滅した研究施設を見て、私は逃げ出すことが出来た。
太宰さんの元に…中也のところに、戻ってこれた。

頭の中でゆっくりと整理していけば、太宰さんがそれを手伝って説明してくれる。
聞けば聞くほど話がどんどん繋がって、どんどん辻褄があっていく。

雪村あぐりさんと直接会った事は二回ほど。
本当に顔を見た程度のもの。

そっか、あの人の妹だったんだ…どうりで彼女も、優しいはずだ。

「…入学してから…最初から、彼女は君を敵視するような視線を向けはしなかったのだろう?」

一つ、頷く。

「君が怖くなるような事を口にすることも、それを連想させるようなことも…なかった?」

また頷く。

分かった…分かってしまった。
私は最初から、あの教室で、独りなんかじゃなかったんだ。

____守られていたんだ、彼女に…カエデちゃんに。

溶け込まないようにしていたのに、それでも彼女はこんな私に接してくれた。
何を言っても、突き放すような言い方を皆にしても。
それでも彼女は、いつも私の所にきてくれていた。

修学旅行で私を班に誘ってくれたのも彼女…暗殺計画を一緒に立てたのも、プライベートで一緒に遊びに行ったのも、椚ヶ丘の行事に誘ってくれたのも。

思えば、私以外の子に対してそこまで深く接していただろうか…

私が思っていたよりも、遥かに彼女は私のことを想ってくれていたのだ。
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