第22章 云いたかったこと
「…蝶ちゃん、君が真っ先に私の所にくるなんて事は………前にもあったね」
『……』
「いつまでここにいるの?せめてデスクの方に行かないかい?…森さんの医務室以外は苦手だろう、君は」
私が学校で咄嗟に作った扉は、中也に向けたものではなかった。
探偵社…もっと言えば、太宰さんに向けて作ったもの。
同じだ、あの時と…一年前と。
「君が突然私の所に飛びついてきた時は驚いたよ…学校で、何があったの」
『…学校…行きたく、ない……』
「!…君がそんなに言うだなんて初めてじゃないかい?…誰かに、何かバレちゃった?」
わかりやすくビクついた。
太宰さんを目にした瞬間に彼に思いっきり抱きついて、そのまま私の状態を察して医務室に連れてきてもらったのだけれど。
それでも、怖い…知られるのも、知っている人がいることも。
けど、どうしてカエデちゃんは私に味方だから、なんて…?
「そうか…実はね、蝶ちゃん?探偵社に…数ヶ月前、女の子の捜索依頼が来ていたことは知っているかい?」
『…?』
そういえば、何やら皆で言っていたような…武装探偵社に依頼するような内容じゃないからと、国木田さんが最終的に他にあたらせようとしていたっけ。
私は気にしなくていいよと言われていたけれど。
「その依頼された女の子っていうのがこの子…“間瀬榛名”ちゃん」
見せられた携帯の液晶…それを見て、一瞬で気が付いた。
『カエデちゃん…?』
「そう。蝶ちゃんは…テレビ見てなかったから知らないと思うけど…天才子役って言われててね?私はこの依頼が来た時にすぐにピンときたのだけど…そこから探りを入れていくと面白いことが分かったのだよ」
『…E組の、前の担任の先生の妹さんだってこと?』
それもだけど、という太宰さんの声に、耳を傾けた。
すると、彼の口から思いもよらぬ事実が知らされる。
「探偵社とポートマフィアの…何人かと協力してね?調べたのだよ……彼女、本名雪村あかりちゃんのこと。それで、分かったのが…一年前君がいた研究施設のシステムダウン…あの時、君はシステムの暴走で死にかけていたんだろう?」
聞いただけでも身震いする。
あんな場所…
「…その研究施設にあった“檻”から君を助け出してくれたのは、紛れもない彼女…雪村あかりちゃんだよ」
『…え……?』
「……君を助けたのは茅野カエデちゃんだ」