第22章 云いたかったこと
カエデちゃんから私の名前が紡がれた時、嫌な想像が全て真実であるとどこかで直感した。
違う、そんなはずない…私の、前の生活が知られてた…?
私の醜さを、この子は知ってるっていうの……?
「雪村…って……白石さんの事…!?」
「!まさか、気付いてなかったっていうの…?…見殺しにしてたくせに…っ、殺しかけてたくせに!!!」
『!?待ってカエデちゃん、私殺せんせーに殺されかけてなんか___』
「こいつは一年前に蝶ちゃんのことを殺しかけたんだよ!!?…っ、覚えて、るでしょ…?……システムが暴走して…」
覚えていた。
はっきりと。
一年前、システムが暴走して…キーワードはそれだけでも十分だ。
「白石…が、殺されかけたって…?」
「しかも雪村あぐりって…俺らの前の担任じゃねえか」
雪村あぐり…その名前にも聞き覚えがある。
定期的に聞いていた。
あの男の口から。
『…………なんで知ってるの…?…カエデちゃん…なんで、私のこと…』
「…一年くらい前のシステムダウン…あの時、私のお姉ちゃんはこの人殺しに殺されたの。……その場所で、お姉ちゃんを見つけたあとに…大人よりも早くに入り込めた私は蝶ちゃんを見つけた」
ドクン、ドクンと動悸が大きくなる。
『見つけた…って…?………見たの、?…研究データ』
「!…大丈夫、蝶ちゃんは何も心配しなくて……私は蝶ちゃんの味方だから。………だからこそ、あんたの事が許せない」
更にざわつく他の子達。
寺坂君におい、と呼ばれれば、彼からついに直接聞かれた。
「お前、どういうことだよ!?あのタコに殺されかけたって…システムの暴走って何が『言わないで!!!!』!!?」
咄嗟に叫んだ。
防衛本能が、無意識のうちに働いていた。
気づいた時には皆にそれが聞かれていて、私に差し伸べられていたはずのカルマの…親友の手を振り払っていた。
『…触ら、ないで……っ…ごめん、私ちょっと…もう、無理…』
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
カルマのこと傷付けた…あんなに私に良くしてくれたのに。
なのに、それさえ考えられないほどに、今の私は制御が利かない。
「こ、殺せんせー、どういうことだよ!!?一年くらい前にって…それ、白石が…」
監禁施設から出てきた時じゃ…
誰かがそれを口にして、衝動的に私は扉を作って逃げた。
その場からも…友達からも。