第22章 云いたかったこと
本校舎の生徒の鼻を明かすのに成功し、大ブーイングで幕を閉じた演劇発表会から数日。
冬休みを目前にした私達は、冬休み中の暗殺計画を立てるべく皆で学校に残っていた。
のだけれど、そんな中。
唐突な爆発音と共に、皆外に出る。
場所は体育準備室の方…そういえばさっき、カエデちゃんと渚君と……殺せんせーがそっちに行っていたような。
「渚!!!」
磯貝君が渚君を発見して、少しふらついた彼を支えに入る。
「何があった!?」
「そ、それが…僕にもよく……」
言いかけた時だった。
猛烈な殺意を感じた…それも、特殊な殺意。
知ってる、この殺意は…
____私のそれと同じだから。
轟音とともに殺せんせーが外に飛び出してきたかと思えば、少ししてからもう一つの影が現れる。
倉庫の屋根の上に立つその様は、凛々しくて強くて、殺気に満ちていて……しかしその姿はどこからどう見ても私の友達で、なのに見たことのない格好で。
『カエデ…ちゃん……?…その殺気…は…』
彼女の表情はきつめの表情になっており、髪が下ろされ…項からは、二本の触手が生えていた。
「!蝶ちゃん…ごめん、隠してて。…ほんとは一撃で仕留めたかったんだけど」
『ごめんって…なんで?』
そういえば、彼女に違和感を感じることがただ一つだけあった。
どうしてだろうか、彼女が私に…得体もしれない相手に対して、あそこまで親切だったのは。
他の子達から明らかに浮いていたはずの私とだ…そんな私と、あんなにも仲良くしてくれたのは。
接していて、安心できたのは。
思えばここに来てから今まで、彼女からは一度たりとも…E組に入学した初日もだ。
ただの一度も、敵意や驚きといった視線を送られたことが、なかったのだ。
そこに気づくべきだった…否、普通は気づけるはずだった。
けれども私は、友達などというものに恵まれたことが初めてで…
「……蝶ちゃんには、隠していたくなかったの。それだけ」
『どういう…っ…!』
私に接するそれとは違って、殺せんせーの方に目を向けた途端、殺気がまた溢れていた。
触手から感じる途方もない憎悪…
知っているんだ、あの憎悪は…あの感覚は。
どうして?どうして知ってる…?
「茅野さん…!?」
「ごめんね、茅野カエデは偽名なの…雪村あぐりの妹って言えば分かるでしょ?……人殺し…蝶ちゃんのことだって…」