第22章 云いたかったこと
期末テストが終われば、そのあとに開かれた学年会議にて、演劇発表会についての概要がしらされたらしい。
『演劇発表会?』
「うん、皆で劇をやって、それを発表するんだよ」
『人前で演技するんだ…へえ…』
そこまでは良かった。
ただ、今回の発表会は、浅野君の意見によってE組がトリを飾ることになったそうで。
そうなると、A組を初めとした本校舎の鼻を明かしてやりたくなるらしく、先程から皆の様子がどこかおかしい。
いい意味でやる気があるような…どこか腹黒いような。
「演技だったら…茅野とかいいんじゃねえ?託児所の時にもすごかったし!白石なんかも…」
まさかここで私に飛んでくるとは思わなかった。
「言われてるよ?蝶…やってみたら?」
『え、やだよ?』
「「「即答…!!!」」」
カエデちゃんも同じく役はやりたくないようで、小道具の方に回りたいと言っている。
『私演出の方に行きたいな…皆が劇してるの観たいし』
「「「…」」」
「蝶ちゃんも一緒にするんだよ?劇!」
皆が何故かしーんとする中、カエデちゃんが笑顔で私にそう言った。
それを皮切りに、他の子達からもそうだぞと肯定的な意見が飛び交う。
それになんだか気恥しくなってきて、ついつい頬を熱くさせた。
『わ、分かった…』
「「「ならよろしい」」」
と、ここまでは良かった。
脚本係も総監督も決まって、スムーズにことが進む…と思っていたのだけれど。
全ては我らが担任、殺せんせーの一言から、とんでもない発想に到達することになってしまったのだ。
「先生……主役やりたい…」
聞いた直後の全員のフリーズ。
私も例外ではなく、同じく皆とフリーズした。
いや、だって主役って…そもそも生徒の演劇発表会なのに?
先生が出ちゃダメって決まりもないけど…え、出るの先生?
ほんとに出ちゃうの国家機密さん?
『動かない役ならいけないでもないかもだけど…』
「…動かない役……それならいいよ、書いたげる」
私の一言を耳にしてか、やけに積極的な狭間さん。
最早わがままを言う子供をあやすかのような扱いっぷりだけれど、皆この先生が大好きだからか、それを聞いても反発する人はいなかった。
そうして出来上がった脚本を元に練習を重ね、ついに本番を迎えたのだけれど…
その時は考えもしなかった。
感じるべきだったはずの違和感に。