第21章 親と子
今回の期末試験において、E組全員が見事に学年五十位以内に収まることができた。
そして堂々の第一位に君臨したのが…
『…さっすが我らがカルマ君』
「今までのテストの全部で満点しか取ってこなかった一位さんが何言ってんの」
『元から知識があって解けるのと、持ってる知識を駆使して知らない問題を解くのとでは全然違うんです〜…数学の最終問題なんて高校化学の範囲だしさぁ』
「それ知ってる蝶がすごいんだって」
よく仕事詰めだったのに解けたよね、とカルマ。
知ってた事だから、と返そうとしたのだけれど…それに返事をしたのは私ではなく…
「蝶は勉強熱心と言うよりは好奇心が旺盛だからな。趣味の範囲なんかじゃ右に出る奴がいねぇくらいの知識量だぞ」
「「「あんたまだいたのかよ!!!」」」
『…褒めても何も出ませんよ?』
「嘘じゃねぇんだ、いいだろ」
『大袈裟。話盛りすぎ』
「じゃあお前俺のいい所と悪い所と百個ずつ言ってみろよ?」
『五千は言える』
少し間をあけてから口を手で塞いだ。
「……お前俺の事好きだな本当?」
『…ここに置いてってやろうかしら』
「それなら俺イリーナの家にでも泊めてもら……!!?あああ悪い悪い!冗談だって!!」
「「「あーあ、泣かした」」」
「煽ってんじゃねぇぞ手前ら!!?」
自身の席にフラリと座れば、その音に反応して中也がこちらにゆっくりと首を向ける。
「………蝶、さん…?」
『…イリーナ、せんせ……きれ…だもん、ね……い、いいよ、蝶我慢できる………いい子にして、ます…』
「俺の綺麗の定義はお前なんだって蝶おおお!!!!この通りだから誤解しないでくれ、頼む!!!!」
『………こないだ樋口さんとか銀さんとかと温泉旅行行ってきたくせに』
「「「温泉旅行…!!?」」」
口にするとギクリとする中也。
それに全員がそちらの方向に顔を向けると、中也が弁解を始める。
「あれは芥川の咳と怪我の治療のための慰安旅行でな!!?」
『私がいなかったのをいいことに樋口さんと銀さんも同じ部屋で寝てたって』
「他の野郎共も一緒だよ馬鹿!!」
『あ、分かった、それでその後に私と二人で温泉旅行なんか行ったんだ』
「………だったらなんだよ!!?」
『…私も皆と一緒に行きたかったのに……』
「…酒の席があったからだよ、察しろ」