第21章 親と子
『…してないよ、無理なんて。無理してたのは浅野さんの方だから……それにほら、カエデちゃんが来てくれて全部疲れ飛んでっちゃった』
「!……次無茶なことしたら怒るからね!ほんとに…っ、中原さんにだって言いつけちゃうんだから!!」
『それは…困っちゃうなぁ、あの人最近更に過保護が増してるから…』
「ああごめん蝶、俺もう中也さんに連絡入れちゃった」
『え゛っ』
本気で濁った声が出た。
心の底からの本音だこれは。
バイブ音の響く携帯を手に取ると、そこには恐るべきほどの通知数が…って怖い怖い怖い!!
急いで電話に出ると、第一声から響く保護者の怒号。
「お前また使ったんだってなあ!!!?ああ!!?」
『ひいぃ…ッ、ち、中也さん落ち着い「落ち着いてられっか!!!人には切り傷負ったくらいでおろおろしてる奴が言う台詞かよそれが!!お前今すぐ扉作れ、鉄分補給すっから!!!」えっ、やだ』
「「「…」」」
「……ほう?じゃあなんだ?俺が直接車飛ばしてそこまで行けばい『ごめんなさい今すぐ作ります』…やれば出来んじゃねえか、阿呆」
大人しく扉を作って開くと、携帯に耳を当てたまま足を組んで椅子に座る中也が目の前に。
思わず正座をして中也に向かうと、周りのみんなは何かを察してか遠巻きにこちらを見つめ始めた。
マイエンジェルカエデちゃんまでもがだ。
カムバック、カエデちゃん。
「蝶」
『…はい』
「………俺の手製の桃のゼリーが食いたいか?」
『!!はい…!!♡』
「「「甘っっ々かよ!!!!?」」」
中也の用意していた白桃ゼリーに…サプリメント。
まあいい、ゼリーさえあるのであれば私に敵はない。
思ってもみなかったサプライズだ。
中也がこちらに来て、飲ませてもらって…と言うよりは半強制的に無理矢理飲まされて、ふと疑問に思った。
『……な、なんでゼリーなんか作って…?』
「………カルマから連絡が入って…アガー使ってさっき作った」
『それ市販のやつ買った方が楽だったんじゃ…』
「蝶が喜ぶかと思って」
『……お仕事は?』
「んなもん中断したに決まってんだろ」
マフィアの幹部がお仕事を中断して、白昼堂々デザート作り…どんな光景だ。
『私ちゃんとお仕事してる中也が好「お前の身体が最優先な」…これくらい、平気なのに』
「けど指先冷たいから…心配した」