第21章 親と子
『……言えば、多分どんな手を使ってでも中也が…首領や社長が、根回しをしてくれたと思います。けど、私はそもそも、この世界に存在していない人間だから』
「………戸籍か。…それは気にしなくていいと何度も『それ』…それ…?」
『浅野さんは、私にいつもそう言ってくださいます…教育を受ける権利は、等しく誰しもに存在する…私のような人間が教育を受けられないだなんてことは、あってはならないことだって』
その言葉に、どれだけ私が救われていたことか。
どれだけ、ありがたかったことか。
「…それは、ただの私の教育論であって……」
『そんな教育論が嬉しかったんです…浅野さん、私から一つ……貴方よりも経験がある事を、お話してもいいですか』
「なんだい…冷や汗が流れている、早く言いなさい」
『……それじゃあ………いい人って…大事な人って、自分が願うよりもずっと早くに、死んじゃうんです』
言った瞬間に、浅野さんの目が見開かれる。
『けど、死んじゃう事が弱いわけじゃない……死ぬにも強さが必要ですから。…それに、そうなることで残った人達に強い影響を残していく力もある………貴方は残された人でしょう?簡単に、それを放棄しないで…』
「君は……どれ程の死を目の当たりにして…?」
『………数えてなんていたら、私…今頃人格保ててませんよ』
困り顔でも笑って見せた。
実際そうだ、数えてなんていたらきりがない。
「…中原さんに連絡を入れ『いいです、大丈夫…これくらいなら、少しゆっくりしてればすぐに良くなりますから』しかし…」
『じゃあ一つだけお願いが……私、殺せんせーのクラスの生徒で、卒業したいです』
「!……君、からお願いだなんて………ずるい一手だ…私の“人”を見てそこまで言うだなんて……君はやはり賢い子だ」
『ふふ…貴方が私を見てくれましたから。見返りくらいはあってもおかしくはないと思うんです』
「……作業を止めよう、安心したまえ…これからは、たまに私も暗殺をしにくるよ」
何故だか中也によくされるように撫でられてから、そのまま私はイリーナ先生に預けられた。
約束通りに校舎の取り壊し作業は終えられて、浅野さんは帰っていく。
窓の外から様子を見ていた皆が校舎に入ってきて、私の元には真っ先にカエデちゃんが駆け寄ってきた。
「蝶ちゃん!!!…っ、血使う能力って、また無理して…」