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第21章 親と子


理事長室にて端末を操作し、少し…ほんの少しだけ、浅野さんについて調べてみた。
人の過去をほじくり返すような真似は好きではないのだけれど、それでも妙に気になった。

浅野さんという人が。

するとどうだろう、驚いたのは、あの人の保有する資格の数々に経歴…そして、彼の力のすべてが教育に注がれているということ。

まるでどこかの標的のよう…

『……私塾…?』

調べていくと、今のE組の校舎のある場所…そこに、浅野さんは元々私塾を開いていたよう。

と、ここまでは普通のインターネットで調べられるもの。
ここからが私の能力の本領だ。

洗い出した塾の生徒リストの中から情報を集めていき、それら浅野さんの経歴の年表と照らし合わせて考えていく。

ふと気になったのは、椚ヶ丘中学が開校した当初から、既にE組のシステムは完成系にあったということ。
…あの人のことだ、持ち前のカリスマ性と敏腕さで、学校の一つや二つ、すぐに建てられる。

だから、あの人の思想を生み出すに値する出来事が起こるとすればその前…いや、直前。

私が調べた情報の中…浅野さんの開いていた私塾の、それも第一期生の中に一人だけ。
見つけた…見つけてしまった。

『……高校で…自殺…?』

これか…?
これ、なのか…?

思いこみすぎだろうか…しかし、浅野さんの教育に対する執心さは、異常とでも言えるほどに素晴らしいもの。
そして合理的なもの…。

あの人、本当はとても優しい人なのに、皆から恐れられて…ううん、皆を恐れさせているような。

____では、今からE組の校舎を…

盗聴器から聴こえた音声に目を見開いた。
それから、急いで扉を作ってE組校舎に向かう。

…いや、これはやめておこう、あの教室には殺せんせーがいる……私が今すべき事は。

小さな頃に、私と向き合ってくれた中也の事が脳裏を過ぎった。
私を見てくれた他の人のことが…織田作のことが。

完璧だから、気付けない。
実力が伴ってしまうから、分からない。

私が、それは痛い程によく分かっている。
…今更甘えることなんて、プライドも邪魔してできないよね。

浅野さんの私塾の一期生から始まって、全ての生徒に電話をかけ、直接話を聞いていった。

話を聞き終わった頃には、私は今度こそ、E組の校舎に向かって扉を作っていた。

強者であれ…浅野さんの口癖が、強く響いてきた。
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