第21章 親と子
期末テストの返却日。
何故だか私は、浅野さんに理事長室へと呼び出された。
「今回のテストも見事だった…して、白石さん。今回…E組の皆には君が授業を?」
『え?…ああ、確かに聞かれたところを教えることくらいは何回か……でも今回、私は横浜の方で仕事が多くてあんまり…も、もしかして点数下がっちゃってましたか私!!?』
「!いやいや、君の点数は変化はないさ。いつも通りだったはずだ…安心してほしい………元より、今日は君にはテストの件以外で話があってね?」
ソファーに座るよう促されてから、浅野さんは話を続ける。
「…中原さんとの婚約は、いつ頃を予定しているんだい?」
『ブ、ッ……!!!?』
「おや」
まさかの質問に吹き出した。
『い、つって…こ、婚約!?婚約ってそんな情報がどこから漏れ「二人共、いい指輪を付けているようなのでつい」!!!……は、早くて来年…決まってはないです、けど……二十歳くらいまで、には…』
「ふふ、可愛らしい……君の親は中原さん、という事だが…当日は、ヴァージンロードは誰と歩く予定で?」
考えてなかった、そんなこと。
確かに、私の親はいないし…というか中也さんだし。
織田作…は、もういないし。
『…中也と結婚したら、私の親はいなくなっちゃうのかな……』
「!…嫌なことを聞いてしまったかもしれないね。お詫び…という事でもないんだが、一つ知恵を……ヴァージンロードは、父親とでなくとも歩けるよ」
『え…?』
「父親がいなければ母親…いなければ血縁者…それもいなければ、君が大切に思う人と歩けばいい。それでいいんだ」
『大切な、人と…?』
それなら、私が歩いてほしい人なんて…たった一人しか思いつかなかった。
お願いしたら、歩いてくれるだろうか…いや、流石に無理かな?やっぱり…
『…太宰さん……は、中也と仲悪いからなぁ…』
「……ほう、太宰さんか…彼は、君の大切な人…なんだね?」
『そりゃあ……あの人のおかげで探偵社にも…椚ヶ丘中学に入学することも出来てるわけですし。…小さい頃から、お世話になりっぱなしですから』
中也と同じくらいに…織田作と同じくらいに。
一人誰かを選べと言われるのであれば、私の中では迷うことなくあの人を選ぶことになるだろう。
ヴァージンロード…考えたこともなかったな…。
また機会があったら言ってみよう…
