第21章 親と子
『……、れ…っ?中…?』
「お?…ああ、起こしちまったか…まだもう少しかかるから寝ててもいいぞ」
『ふえ…?…あ…えへへ…♪』
中也に微笑まれながら撫でられて、上機嫌になった私はその手に擦り寄るようにつられて笑顔になる。
「何だよ、えらく機嫌がいいじゃねえか…眠いんじゃねえの?昨日だってそんなに寝れてねえんだし」
『ん…中也に撫でられるのがいい…』
「……そうか」
どこか嬉しそうにはにかんで、中也はまた私を撫でる。
まさかこんなに寝ることになるなんて思ってなかった……寝不足の時に甘い物をたらふく食べたらすぐこれだ。
それも、この人のところにいたものだから余計に。
『…中也、さん…』
「なんだ?…どうした…?」
『……昨日、の…中也さん、ほんとに蝶の事…その………お嫁さんに…?』
「…結婚出来るような年齢になったらな」
返された答えに、思わず目を丸くした。
『え……二十歳、過ぎたらって…』
「本当は…お前の事を考えたら、世間的にもその方がいいんじゃねえかって思ってた………けど、お前の意思を一番に考えるんなら、それでもいいんじゃねえかと思っ…蝶?」
聞き間違いじゃなかった。
やけに、変な言い方だと思った昨日のあの宣言。
『…き、昨日あんな事があったから…?う、嬉しいけど…嬉しい、けど…中也、さん、嫌なんじゃ…』
「俺が嫌になる理由がどこにあるんだよ…ま、強いて言うならお前のウェディング姿は、二十歳くらいの姿の時に堪能してぇもんだごな」
今年一回見せてもらってるし。
言われた言葉は前と同じもの。
けれど、中也の口からいつでもいいと言われるだけで…それだけの事で、なんだか線引きされているように感じていたものがなくなった。
『中也さ…ん………何か、変わった…?』
「…変わってねえよ、ずっと前からこんなもんだ…お前の前で出すのが照れくさかっただけで」
『……そ、ですか…なんか、安心…する。……こういう中也さん、一番好き…』
「!…いつもより素直じゃねえか……素直んなったら一段と可愛らしいな、ほんと」
雰囲気が…言葉遣いが、口調が、声が。
柔らかくて、優しくって…安心する。
『中也さんが優しいからこうなっちゃうの…えへへ…』
「……じゃあ、優しい俺が今ここで蝶にキスして欲しいなと思ったら?」
『…蝶もそうなっちゃい…ます』
