第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「だから止せと言ったろうに…済まなかったね、怪我は無いかい」
デコピンを受けて額を抑え続ける絆創膏の男の人に、呆れたように言った広津さん。
広津さんは私の前に片膝を立ててしゃがみ込み、謝罪の言葉を述べる。
それに合わせて銀さんもしゃがみ込み、ほかの人達は再びざわめき始めた。
『やめてくださいよ御二方共、私今はマフィアじゃないんですから』
「そんなわけにもいかないでしょう、折角助けに来てくださった貴女に、我々は銃を向けてしまったのですから」
『だから、さっきのは仕方ないんですし…折角久しぶりの再会なんですから、頭上げてください』
そこまで言えばようやく二人共立ち上がってくれる。
樋口さんも痛みがマシになったようで、歩いてこちらまで来てくれた。
「ひ、広津さん…この方はいったい?」
「そ、そうだぜ。俺だって誰だか知らねえのに何で銀までそんな風に…」
「そうか、そういえば初対面だったかな。彼女は白石 蝶ちゃんと言ってね?四年前まで、我々ポートマフィアの特別幹部という役職に就いていた、正真正銘我々の上司にあたる子だ」
疑問を投げかける樋口さんと男の人に対して、広津さんが見事に暴露してくださった。
「特別幹部!?しかも四年前っつうと、こいつただの餓鬼だったんじゃ…ってえ!!」
まだ元気が有り余っている様子の男の人に、今度は銀さんが蹴りを入れた。
「確かに当時蝶ちゃんはまだ十一歳だったが、先程も見ただろう?彼女の能力と銃捌き、そして状況判断能力…どれをとっても、並のものじゃあない」
『そ、それは流石に褒めすぎかと。それに私はだいたいいつも中也さんと一緒に行動してましたし…』
中也さんと何気なく口にした私に、男の人も樋口さんもまた動揺する。
「中也さんって……中原幹部の事か!?」
なんと恐れ多い、なんて聞こえてきたりもするが、黙っていれば広津さんが全て説明してくれた。
「この子は元々、中原君が連れてきてポートマフィアに入った子だ。聞いたことないかね、彼が探している人がいたと」
「!それでこの間、芥川先輩に?」
樋口さんが私を見て質問する。
『はい。芥川さんに再会した時にお願いするしか、中也さんに生存を伝える手段がなかったもので…芥川さんと樋口さんには本当に感謝しているんです。ありがとうございました』
深く深く、樋口さんに頭を下げた。
