第21章 親と子
『は…ッ、は…ぁ…っ』
「可愛らしい反応だ………その様子じゃあ、もう聞こえてないか」
聞こえてないことはない。
ただ、理解できるくらいにまで頭が回せないだけ。
抵抗も何も、出来ないだけ。
衣服を緩められて身体を直に撫で回されて、それだけでも昂る私の身体。
近づいてきた相手の…中也と同じ表情をするそれが迫ってくるのを虚ろな目でぼんやりと確認したところで、正気に戻った。
「キスをするのがいいんだ……ッ、…あ…!?」
漂う冷気…そして凍りつく相手の唇。
私に触れていた手も凍っていた。
「……に、してんだよ…!!人が優しくしてやってっからって調子に乗ってんじゃねえぞ!!!」
『!?…ッきゃ……っ、ぅ…あ…ッ!!?』
中也の声のまま。
中也の顔のまま。
激情したその姿を私に向けられるのは初めてで。
ただ単純に、怖かった。
大好きなあの人の手が、私に痛いことをするのが。
ダメだ、私の中で中也がいなくなる…いなくなろうとしてる。
踏みつけるように腹部を踏まれ、グリグリと圧迫され続ければ、口から鉄の風味が漂った。
気付いた……ああ、吐血してるんだって。
目の前にいるのはどこからどう見ても中也なのに、変なの…
実験中だって、こんなにもおぞましい事なんか…なかったはずなのに、変なの。
泣くのが我慢出来ないなんて……変なの…
『い、たぃ…っ』
「…!……おい、こいつにあれ付けろ」
「!」
途端に一人が私から離れて、何かを持ってきたかと思えば目に布を巻かれる。
『!?や、だ…っ…やああ!!?』
「うっせぇよ、黙ってろって!!!」
『いッッ…!!?…ッ、あ…や、だ…やだっ、やだああああああ!!!!!』
真っ暗になった視界。
そんな中で響くあの人の声は、聞いたことのない程に乱暴なもの。
「っせぇっつってんだろ…喋んな」
『っ!?…、ッぅ…っ…ぁ、う……!!』
口に付けられたのは拘束具の一種だろうか。
ボールのようなものを咥えさせられて、それを後頭部で外れないように固定される。
口が閉じられないのか開けないのか、これもなんか変な感じ。
喚くことも出来なくなってただ恐怖に身体を震わせていれば、肩に手が触れた。
『ふ、…ッ!!?』
「……おぉ…敏感じゃねぇか…最初からこれぐらいしてりゃあ良かったな……んじゃ、失礼すんぜ」