第21章 親と子
「手前…うちの蝶をどこにやった」
「面白い事を仰る…分かっているんでしょう?どこかにやられたのは自分の方だってことも……我々の力が“視覚の保護だけでは”どうしようもない類のものだということも」
蝶が目の前から消えて、かと思えば見知らぬ場所が目の前に広がっていた。
そんな中。
「…気持ち悪ぃことすんじゃねえよ、手前ら……その姿をしてりゃあ、俺が手を出せなくなるとでも思ってんのか?あぁ?」
俺の前に現れたのは一人の少女…真っ白で、綺麗という言葉が誰よりも似合いそうな。
しかしどうだろうか、俺からしてみれば、あの少女から感じ取れるはずの可愛らしさが見当たらない…そしてこんな状況の時のあいつが俺を見つける時は…
相手を自分の異能で床に叩きつけてから、顔を見ないように顔面を床にめり込ませる。
「グ、ッ…!!?」
「……あいつがこんな状況になった時に、そんな笑顔で俺の前に現れるわけがねぇだろ…手前は誰だ?異能力者か?おい」
言えば相手の姿が代わり、見知らぬ女が現れる。
見知らぬ…いや、こいつは…
「…手前、前に蝶の学校の山ですれ違った奴だなぁ?……そういう事か…で?異能力者は?」
「!…っ、わ、たしは情報を漏らしたりなんかしな___」
目の前の女が口にした時だった。
『やだあああああああ!!!!!』
「!!蝶!!?」
悲鳴にも近いような、あいつの声。
どこからだ、今の声は…いや、どこからも何もかなり近かったのは確か。
女の口が弧を描いたのを目にして、首を掴んで片手で持ち上げた。
「……手前の仕業か?」
「だ、ったら何だって……ッ、」
「もう一度聞く、これを聞かねえならその顔二度と拝めねぇようにするからな…手前は異能力者か?…それとも他のどこかに異能力者がいるのか?」
「ひ、ッ…!?…わ、たしは……私の異能力、は…」
___脳に流れる情報を操作する異能力
眼前にナイフを突きつけられ、ようやく女は白状した。
「脳…他の異能力者はどこにいる?あと何人いるんだ?」
「……後は、二人。自身の姿を自在に変えることができる奴…と、それから………触れた物体の重さを変えることのできる奴」
「!……手前、まず俺と蝶から異能を解きやがれ…情報操作っつったな…解け、今すぐに!!」
何かが、拙いような気がした。
大変な事が起こっている気が。