第21章 親と子
首領から渡された書類にて、壊滅させる組織の概要をまず掴む。
何やら今回の仕事はポートマフィアの利益になるだけでなく、探偵社の方にも利益があるとかないとか…そこで、急遽私と中也を組ませることになったそう。
『中也とお仕事久しぶり…』
「もっとも、一組織の壊滅くらいなら俺かお前か片方でもすぐに片が付きそうだけどな」
『念の為でしょ、念の為…資料の情報から私が辿っていけば、そこまで強くなくったってすぐに一組織くらい………ああ、成程。そういう事』
首領が、どうして私と中也の二人を選んだのか…どうして社長もそれで納得したのかが、分かったような気がした。
どういう事だよ?と、車のハンドルを握った中也が横から私の操作しているパソコンの画面を見覗き込む。
「えっと…コピー……?…って…、ああ、そういうことか。…そりゃあ俺ら二人が呼ばれるわけだわな」
そう、今回壊滅させる組織の中には異能力者が勿論いるのだが、その中でも厄介な能力…コピー…というよりは変身の方が近いだろうか。
自身の姿を意のままに変えることのできる異能力者がいるらしい。
見た目で区別がつかないために、そこに虚を突かれると厄介なのだとか。
そして更には他にも異能力者が二人いて、そっちの情報は漏れてはいない…そっちの方が案外厄介かもしれないな、これは。
『…中也、今回は……多分、私がやるのが得策よね?』
「まあその方が楽なのは楽なんだろうが…異能を取り上げるにしても数がある。この条件なら確かに単独で動くべきではない……にしても、こういう時は普通太宰の野郎を呼ぶもんじゃねえのか?」
『その方が明らかに合理的で…ああ、でもほら、相手が私たちの中の誰かに化けてたらやっぱり大変だから…』
「こっちの長年の付き合いにかけたってわけか………っと、着いたぜ。このビルだ」
中也が車を停め、そこから降りるとビル…の割には少し迫力に欠ける建物がそびえ立っている。
『……一応視覚のサポートだけかけとこう?姿を変えれる異能力者がいるから念の為に』
「おう、それはそうだな。頼……む…ッ!!?」
『へ…?……中、也さ…』
私が中也と自分自身の視覚保護をしたその瞬間の事だった。
『…ど、こ……ッ?』
今、目の前に居たはずの…触れていたはずの中也の姿が、消えてしまった。