第21章 親と子
「ったく、もしも蝶が乗り気じゃなかったり泣きでもしてたら手前ごときとっとと俺が海に沈め『太宰さんにばっか構う中也嫌い…』全く蝶は可愛らしいなぁ、そんなに俺に甘えたかったのか?んん?」
「うっわぁ、出た親馬鹿デレデレモード…ちょっと、うちの蝶ちゃんにそんないかがわしい手つきで抱きつくのやめてくれない?ロリコンマフィア」
「蝶がこっちに来てっからって妬んでんじゃねえよ手前」
『…また太宰さんばっかり』
中也の首に回した腕に力を込めると、中也は肩をはね上げて慌てて私を撫で始める。
悔しいながらにこうされると、私はこの人に勝てそうにない。
「…で?蝶にわざわざ目隠ししてまで行かせるたァ…よっぽど見せたくねぇもんだったんだろうな?」
「ああ、勿論さ。本来蝶ちゃんは目を閉じた状態でも戦おうと思えば戦える…けど今回は、何かの拍子にでも見られては、怖がらせてしまうようなものだったからね」
知ってる人が被害者なのであれば特に。
あのアジトに入った段階で感じ取れた凄まじい血の匂いからしても、私の苦手なものであることは分かりきった事だった。
『太宰さんは私に酷いことしないよ…?』
「!……ああ、お前にはな。…怪我は?」
『無い…大丈夫。寧ろ中也のとこいるから元気になっちゃった』
「お前なぁ…」
『えへへ…っ、?なぁに?』
ニヘラ、と頬を緩ませると、手を取って指を絡められる。
それに一瞬動揺して手元を見ると、久しぶりの恋人繋ぎ。
普段もっとくっついてたりするけれど、改めてこうされるとドキドキせずにはいられないもの。
「…怖くは?」
『!…中也のとこに来たから怖くないよ』
「……ならいい…じゃあ後、太宰の糞野郎にどこに触れられた」
『触れられたって、背負われてたからそんな「脚とか太腿とかぁ…ああそうだ、背中とかもすごく女の子らしかったよね♪あとはやはり女性らしさのある胸元なんかも」ちょっ!!?』
確かに触れはしたけれど。
言い方ってものがあるじゃない……なんて思っていれば感じた殺気。
それに恐る恐る顔を向けると、不機嫌度が最高潮になっている中也がそこに。
『あ、あの…中也……?私、背負ってもらってただけで…』
「おやおやぁ?口では自分のものだと言っておきながら隙だらけなんじゃないのかい中也…いつか私に、大事な蝶ちゃん食べられちゃうかもしれないよ」