第21章 親と子
乱歩さんからあった突撃の合図と共に私が能力を発動すると、敦さんの方から驚いたような声が上がる。
私が太宰さんに背負われたまま、現場で最初に出された指示は簡単なもの。
敵のアジトの裏口の扉を開けること…開けられればそれでい。
だから私は太宰さんに頼んで手に扉を触れさせてもらい、その扉をたった今、消滅させた。
「消え…っ!!!」
「は?……はあ!!?なんなんだお前ら!?どうやってそんなところからいきなり…っ、カメラにも映ってなかったぞ!!?」
「あ、こんにちは皆さんお元気なようで…カメラに映ってなかったなんてそりゃそうでしょ。うちの優等生ちゃんがいるんだから♪」
外にあるだろうと危惧されていた監視カメラを欺くのには、他の二班には谷崎さんが細雪を、そしてこの突撃班には私の迷彩壁を使っている。
『太宰さん、馬鹿にしてる?私の手でとどめ刺してあげよっか、今、ここで』
「君、仕事になるとあいつに似てくるよね本当…褒めたつもりだったのにさ…………!壁、頼める?」
『任せてよ、全包囲でいいんでしょ?』
「うん、よろしく♪」
自身と太宰さん、そして敦さんの全身に幕を貼るようにして壁を張る。
恐らく相手が銃を持ち出したのだろう。
発砲音が聞こえた……のだけれど、それは私の作ったであろう壁に触れて、消滅する。
「…蝶ちゃん、君の能力…こんなのだっけ?」
『奥の手は誰にも見せないものなのよ敦さん…ま、まだ序の口だけど』
「た、弾が消えた!!?弾いたわけでもなく…消えたのか!!?」
『あー…あんまり下手なことしない方がいいと思いますよ。まだ銃弾で良かったですけど……触れたら最後ってやつですから』
「「「ひ…っ!!!?」」」
相手の戦意が喪失したのを皮切りに、今度は太宰さんからの指示が出る。
「よし、じゃあ作戦開始だ蝶ちゃん」
『案内先は?』
「探偵社の医務室がいいな…出来れば寝台の上。特にマスターの方が容態が悪い」
『了解です。…で、今どこにいます?』
太宰さんが少し空気を変える。
そんなに考えるのも嫌だったんなら、本当に提案しなかったら良かったのに。
考えているとすぐに答えが割り出され、太宰さんは私に伝えた。
「突撃用の助走でここから真っ直ぐ四歩…そこから二時の方向に寝返り、合わせ歩幅で二歩行って……茅野カエデちゃんくらいかな」
『了解』