第21章 親と子
「それで今回の作戦なんだけど…乱歩さんの全面協力の元、蝶ちゃんにはなんとかオーナー夫婦を“見ることなく”その場から救出してほしいんだ」
『ん…分かった』
「分かったって…蝶ちゃんそんなこと出来るの!?いくら蝶ちゃんでもそんな…」
探偵社の事務所で、乱歩さんによって分けられた作戦班のうち、突撃班の方に私は配属された。
敦さんがこのようにして先程から私を心配してくれるのだけれども。
『大丈夫、それくらいなら得意分野だし……なんならビルごと相手を凍結させてジワジワ壊死させるっていう手段だって___』
「ヒッッ!!?」
「はいはい、熱くならないの特別幹部様」
『太宰さんだって一回考えたくせに』
「よくお分かりで」
本当は賢治さんと一緒に突撃する算段だったのだけれど、私が行けるということで賢治さんは乱歩さん達の班に加わってもらい、出口の封鎖に回ってもらうことに。
『特別幹部さんへの作戦暗号は?』
「迷子のお母さんでいかがかな?」
『…ふふっ、了解です』
「ま、迷子のお母さん…?迷子になるのはお子さんの方じゃ…」
「いいのだよこれで」
今回は探偵社に正面から喧嘩を売りにきた相手。
ちゃんと仕返しくらいはしなくちゃ……まあ、私は半分は救出役としてだけれど。
『太宰さんがそれを自分からするって言うとは思わなかった』
「君が動いてくれるんだ、これくらい確実な方がいいだろう?」
『確実ってよく言いきれますね』
「蝶ちゃんの事信じてるからね…いいかい?もう一回確認。絶対にオーナー夫婦の事見ちゃダメだから…なんなら目隠ししていくかい?」
太宰さんは、苦笑しながら布を手に持って私に差し出す。
『……終わったら…分かってます?』
「うん、ちゃんと約束する」
「ち、蝶ちゃんに目隠しって…苦手なんじゃ…」
「オーナー夫婦の現状を見せるよりはマシかと思ってね…じゃ、行こうか。蝶ちゃんは私が背負っていこうか?」
『ん…怖がらせたら拗ねる』
「それは気をつけないと」
太宰さんが頑なに私に目を使うなと言うのは、ただ私が見たくないものを見せたくないということだけが理由だった。
私が苦手なものを知ってるこの人が言うことだ、多分相当なものなのだろう。
布を巻いたらすぐに太宰さんが手を取ってくれ、そのまま背中に乗せてくれる。
ここからは仕事モードだ。