第21章 親と子
烏間先生や殺せんせーにそれを伝えて、内容も聞かされないまま切られてしまった国木田さんの元へ扉を繋げて移動する。
するとそこでは、実は私の苦手な血の匂いが蔓延っており…
『…あ、れ……?ここ…』
「!白石!!悪いな、こんな所に呼び出してしまって…」
『い、いやいいんですけど……ここって“うずまき”…ですよね?』
そう、この店内の装いに私は見覚えがあった。
武装探偵社のビルの一階…我らの憩いの場所である、喫茶うずまきだ。
「ああ、その通りだ…オーナー夫妻がギルドの資産を狙う輩に襲われてな。…それだけでなく、御丁寧にもさらっていってくれてしまったんだ…夫妻の安全確保のために、お前に手伝って欲しい」
『そ、それなら先にそう伝えてくれれば…なんなら私が皆さん移動させますよ??オーナーの所にでも…』
「それはやめた方がいいよ蝶ちゃん」
突如響いた冷たい声。
ああ、こんな声聞いたの久しぶり…そっか、皆ここが大好きだもんね。
そりゃあ……太宰さんだって怒るよね。
『…どうして……?』
「国木田君にはあまり君の前で怖がらせるような発言はしないよう頼んであるのだけど、中々に酷な襲われ方をしているものでね?…恐らく君は今回、被害者の二人を見ない方がいい」
『!!…私、元々はそっち側の人間だったんですよ?何を今更……』
「…今ここに私と国木田君がいるのは現場検証のためだ……が、結婚を見ている君を見てても分かるよ?……いいや、もう匂いにさえ敏感だね君は…あんまり得意じゃないんだから、そこは“大人”に任せなさい」
太宰さんにしゃがんで頭を撫でられて、そこで初めて自分が体を力ませていた事が分かった。
『あ……っ、う…太宰さ…ッ』
「うん、ごめんねこんな所にこさせちゃって。君の状態を把握したかったというのもあって、ここにいたんだ…怖い思いをさせたね。大丈夫、ここは私と国木田君しかいないよ……ポートマフィアの拷問室に入るのはもうマシになったと聞いていたのだけど、やっぱり君も女性だからね」
「……まさか本当に血液が苦手だったとは…それくらい話してくれてもいいんだぞ?ただでさえ体を張るキツい仕事を任せることが多いんだ、お前には」
国木田さんの言葉に糸が切れたようにポロポロと雫が落ちてきて、それを手で拭って泣きじゃくった。
「…ほら、今はお兄さんに甘えときなさい」