第21章 親と子
『へぇ、そんなことが……にしても、あの浅野さんがそんなことを…?あんなに優しそうな人なのに』
「蝶ちゃんはそんなに優しそうに見えるの?あの理事長が…」
カエデちゃんがおずおずと尋ねるのに、私はさも当然のようにしてうんと口にした。
『ちょっと教育バカ過ぎてある意味殺せんせーみたいかもしれないけど…やり方はどうあれ、すごい教育者だと思う。浅野君の生活からして、特に愛情を注いでほしいだとかそういうものもなさそうだし…自分の息子に対しても、ある意味正しい対処をとってはいるんじゃないかな』
どれだけ裏があろうが、私からしてみれば可愛らしいものだ。
それに、経歴なども裏で調べさせてはもらったが…どれだけ教育熱心であるのかも分かっている。
それに、あの人が人より厳しいというか、狂気じみているというか…そういうところは、全て自分の為ではなく人のためにそうなってしまったことだから。
やり方はどうあれ、乾いた関係であれ、お互いの利害関係を一致させつつ上手く子供を育てている人だと思う。
ああいう形の家族もある…そこに目をつけると、あの人も十分すぎるくらいに立派な、人の親なんじゃないかと思えるから。
「へ、へえ…なんか蝶ちゃんってすごいところに目付けるよね、やっぱり」
『どうだろ……私は…寧ろちょっと羨ましい面もあったりはするから』
「……あーあー、ほら、ホームシックにならないの蝶。どうせ今日もまた中也さんと一緒に仲良く寝るんでしょ?家に帰るまでの我慢だから」
『子供扱いしないでよ』
「だって子供じゃん、親に会いたくて寂しがるなんて。子供の中でも特別甘えただねぇ?かーわいい…こりゃ中也さんも親馬鹿になるわ」
カルマが楽しそうに私をいじり始めたところで私の頬は熱を持っていく。
『う、うるさい…なんか今日いつにもましてニヤニヤしてるよカルマ』
「えぇ?俺はいつもと同じだよ〜…ところで昨日はどうしてそんな事になっちゃっ____」
しかしここで、カルマが私の首元を指さしたタイミングで私の携帯が振動する。
『!!ごめんカルマ、ちょっと電話…!』
急いで廊下に移動して相手を確認すると、そこには国木田さんの文字書き。
『も、もしもし国木田さん?どうされました??』
「授業中にすまない白石、救援要請だ!!」
『ええ!?また!!?今度はどこに…』
「俺の所へ!!」