第21章 親と子
何やら磯貝君の話では、少しでも私の負担にならないために話を内緒にしておきたかったのだというもの。
私なら恐らく今までとあまり変わらない成績を取れるだろうと見越した上での判断だったそう…恐らくそれは正しいこと。
『ふぅん…勉強くらいなら負担でもなんでもないのに。何?中也か誰かから何か言われた?』
「そういうのじゃないんだけどさ…普通に考えて仕事だけでも無理してるような量だと思うんだ、こんなにずっとじけんかいけつしてばっかりで」
『探偵社なんかこんなの日常茶飯事なんだけどな…ポートマフィアやってる時よりマシだよこれでも』
「…それに今回はE組に何かあるようなことでもないし…かといってA組に勝つ気ではいるんだけどね?…蝶ちゃん、俺らのことばっかりですぐに自分のこと蔑ろにしちゃうでしょ?」
いい例が鷹岡や死神、それに体育祭の件。
体育の時も南の島の時も、そうだったと皆言う。
一人で突っ走って攻撃を肩代わりしたり、死神相手に皆を遠ざけたり、それで結局怪我したり死にかけたり攫われたり…
考えてみればまともな生活ではないのだけれど、私は不思議と無茶ばかりをしているとはやはり思えないのだ。
が、周りから見てみれば違うらしい…というのも、それを確認する方法はもう私もわかってる。
自分と中也を入れ替えて考えてみればいい…中也でなくとも、E組の誰かや大切な人でも。
そう考えてみれば、確かに周りの立場からすれば…心配にもなってしまうものなのだろうか。
「前に中也さんが記憶飛ばしてた時なんか、一睡もせずに気張り詰めてばっかだったじゃん、蝶」
『…徹夜は禁止されちゃったから、もうしないよ。無理もしないし…私が中也に嘘ついて夜中お仕事してたら怒らせちゃったから』
「!…蝶ちゃんにも怒るんだ、あの人……」
『そりゃあ…私の親ですから……だから大丈夫だよ?今度はいったいどんな話を持ちかけられたの?』
「………うん、じゃあ信じるからね?今回の話なんだけど…」
磯貝君から告げられた衝撃発言。
それは、浅野君がE組に向かって頭を下げて頼み事をしに来たということ。
というのも、現在本校舎では理事長である浅野さんがA組の臨時担任を務めているらしく、ハードを通り越して無理のある教育を成しているのだとか…それを止めるため、E組皆に、A組に勝ってほしいというものだったそうだ。