第20章 家族というもの
「毎度の事ながら…本当上手いよねぇ中原君。不器用なくせに」
「っせぇな阿呆が、たりめぇだろ。何年こいつの保護者やってきてると思ってんだよ」
「世の中こんなに子供を懐かせるのが上手な親もそうそういないと思うんだけど…?」
『えへへ……♪』
「…ほんっと、可愛い顔してくれちゃって」
トウェインさんの元に後日、引越し祝いに菓子折を持って行った。
渡したら渡したで喜んでくれたのだけれど、彼はそれよりも、私が楽しそうに過ごしていることの方が嬉しいようだった。
私の頭を撫でようと、そんなトウェインさんが手を伸ばす…のだけれど。
「……ねえねえ中原君、君子離れしなよそろそろ?僕が撫でるくらいいいでしょ別に〜」
「はっ、生憎俺は死ぬまで子離れしてやらねえって誓ってんだ。悪かったな力の差がデカすぎて」
『大人気ない中也も好き…♪』
「…蝶ちゃん、僕からの撫で撫ではいりませんか?」
『……嫌いじゃないけど、ほら。今するとこの人妬いちゃうから』
ニコリと笑うと、中也の顔が少しだけ赤くなったように見えた。
私の言葉にキョトンとしたトウェインさんはふっと笑って、そっか、と口にする。
「嫌がらなくなってくれたなんて嬉しい限りだよ蝶ちゃん!中原君のとこが嫌になったらいつでも乗り換えてくれていいからね!!」
「残念だがんなことはありえ『うん、じゃあそうしよっかな』…蝶さん?あの…え……?」
『ん?中也さん私が嫌になるようなことするんですか?』
「……しませんけど」
『ならよろしいです』
「うんうん、じゃあ僕のところは家出先にでもしてもらおうかな」
「えらく範囲の狭い家出だなおい」
そういえば、トウェインさんの家庭事情なんて初めて聞いたな、なんて思ったり。
いつも私のことばっかりで、この人の事は実はそこまで知らなかったから。
お母さんもお父さんも…それに四人もいた兄弟まで。
本当に私に会いたかっただけだったんたなぁ、なんて思ってたら、なんだか本当にたたのいい人にしか見えなくて。
『…トウェインさん、付き合ってる女の人とかいそうなのに』
「付き合いたい女の子に振られ続けてるからなぁ…」
『私なんかに選ばれちゃったら、死んでも付きまとわれるからやめといた方がいいよ』
「……それでも、遠慮しないで付きまとってくれちゃっていいからね?」
『!…うん』