第20章 家族というもの
そうか、もう私はその点において、満足してしまってるんだ。
死ぬにしても生き続けるにしても最後までこの人がそこにいてくれるなら。
……それに、私が産んだとしても、その子が私のような体質をもって生まれて欲しくはない。
かといってすぐに死んで欲しくもないし、自分よりも早くに死んでなんて欲しくない…しかし私のように、死ねない体に生まれてきて欲しくもない。
変な体に生まれてしまう辛さは、私が一番よくわかってる。
その子のことを考えても、ただ子供が欲しいという考えだけで、安易に産んではいけないものだと思うのだ。
……少しだけ普通の体になれて、やっとそこまで考えられるようになった気がする。
やっと、少しだけそういうところと向き合えるようになった気がする。
____なんで私を作ったの?
なんで、私を産んだりなんかしたの?
こんな体で生まれたいなんて、私は一度でも思ったことなんかなかったよ____
幼少期の思い出というものは本当に人格形成に繋がるものであるらしい。
そして更に言ってしまうと、私が他よりも特定の人物に甘えたがってしまうのも、恐らくそこが起因している。
『…中也に甘えてるのが好き』
「奇遇だな、俺もお前に甘えられてんのが好き」
『………早くに親になっちゃったから、子育てにはもう満足しちゃった?』
「…それもそうかもしれねえな…言ってもまだうちの蝶は成長途中なわけだし………本音を言っちまえば、いつでもお前の親でいたいんだ。勿論お前が子供が欲しいのならそれでもいいとも思うんだが…少し寂しいっつうのがあるにはある」
語られた本音に目を丸くした。
この人も私と同じようなこと考えてたんだって。
こんなに素敵な人の一番の大切を二箇所も独占できるのが、私は嬉しくて幸せで、それでいてそれが当然だったから。
それが無くなるかもしれないのは、怖いといえば怖いことだったから。
「俺がお前に、子供は別にいなくてもいいってずっと言い続けてたのもこれが原因なんだよ…笑うか?俺も…まだまだお前をこうやって甘やかしたりねえんだよ」
____お前が独りで頑張ってきた分、俺はお前を甘やかしてやるんだって決めてるからな
『……やっぱり中也さんて世界一かっこいい人…蝶、死ぬまで中也さんとこの子も恋人も独占してていい?』
「!……勿論だ…死ぬまで大事にしてやるよ」