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第20章 家族というもの


『…』

「……蝶、飯は?」

『今は中也の方がいい…』

行為の後、中也のシャツにしがみつくように抱きついて、顔を胸に無理矢理埋める。

「つっても、今日昼だってそんなに食ってねぇだろ?」

『中也と離れるくらいなら餓死した方がマシ』

「お前がそれ言うと本当にしそうだから怖ぇんだが…なに、もう少し可愛がってほしいのか?」

『へ……っ!?そんなこと言ってな…ッ、ん…ぅ…っ』

私が焦って中也の方に顔を向けた瞬間のことだった。
やられた、まただ。

触れるだけの、私が大好きな大好きな中也のキス。

「……ほんと、好きだなお前も」

『ぁ…う…っ、い、今かっこいい顔しないで……くだ、さい…』

「お前俺がどんな顔しててもそう言うから無理…物好きめ」

『………中也さん…は……かっこいいんだもん』

もう一度きゅう、と抱きつけば、少し間をあけてから中也の大きな手に撫でられ始める。

大人の余裕というやつなのか、慣れというものなのか…はたまた習慣なのかしたいだけなのか。
なんにせよこの人に触れられることに安心感を覚えきってしまった私の体は、そんな事にも脱力しきってしまうほどにはよく出来てしまっている。

「お前程の女が相手にもなると、恋人やんのも親をやんのもなかなかかっこつけちまうもんなんだわ…最高の褒め言葉だよ」

『……旦那さんは?』

「それは二十歳んなったらな」

『指輪あるのにまだダメなの?』

「…俺がもう少しこのままお前と楽しんでたいってのもあるにはある……結婚ってなるとお前にも何かと心労やらで負担かけちまう面もあるだろうし………もう少し、親でいさせてくれよ…お前の」

サラ、と指を通される髪。
なんだか、初めて中也の方からお願いされたような気分だ。

私がこんなだったからか、聞いたことなんてなかったから。

親心というものなのだろうか…中也の口から、こんな言葉が出てくるだなんて。

『旦那さんになったら、中也は親やめちゃうの?』

「……お前、将来子供作るつもりはねぇのかよ」

『え…あ…………中也、は欲しい?私は…』

正直に言って、この人に…中也に普通の女の子の体をあげたかっただけだから。

「…俺はお前と、今のこういう関係が一番好きかもしれねえんだよな」

中也の言葉に少しだけ安心したのはなんでだろうか。
私もつくづく、この人に甘えていたいらしい。
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