第20章 家族というもの
「お、お願いって…?……いいよ、何言われても…そもそも僕は君にろくでもないことしかしてこなかったような奴だから、もう会いたくないって言われても____」
『____…で、す…』
「………えっ…と…?…………ごめん蝶ちゃん、もう一回…」
ただでさえ言うのが怖かったのに、もう一回なんて。
それに震え始めれば中也が私を落ち着かせるようにまた撫でる。
「大丈夫だ、こいつはお前が怖がるようなことはしねぇよ…そうだって分かってっからあんなに泣いてたんだろが、お前」
「え、蝶ちゃん泣いて……って泣いてる!!?えっ、ごめんね!!?僕そんなに怖がらせちゃった!!?」
『ちが、うのッ…ちが、くてっ……トウェインさん…ごめんなさっ…』
ポロポロと簡単に雫が落ちていく。
それにおろおろしながらもトウェインさんは謝らなくていいよと待ってくれ、その表情を見てまた泣きそうになった。
「…教えてくれる?僕も聞きたい…君がそんなに怖がってまで思っちゃうことなんて、君が本当に望んでることだと思うから……なんでも言って?」
『!…私が望んで……』
「うん、分かるよ流石に…だって蝶ちゃん、ほんとにしたい事とかは絶対教えてくれないもん。…今くらい無茶苦茶な状況でもなくちゃ、絶対口にしてくれないから…ほら、さっき…なんて?僕はちゃんとここにいるよ」
『……トウェインさ…んッ………』
なんにも冷静になんか考えられない。
けれど、言えば中也の好きな子になれる…私の思いもトウェインさんに伝わる。
言わなかったら苦しくて、また中也を困らせて…中也の嫌いな子になっちゃう。
言う以外の選択なんか、今の私の頭では考えつかない。
「うん、なぁに?蝶ちゃん…」
『…あ、の……っ…横浜、にいて…ほしぃッ…の………ほんとは私ッ、ずっと近くにいたくて…前みたい、に会いたくて…』
泣きじゃくりながら、勢い任せに吐き出した。
精一杯だ…言葉を飾るほどの余裕もなくて、本当にお願いしか口に出来ない。
「……それって、つまりは僕に移住してほしいってこと?横浜に…いつでも蝶ちゃんと会える距離の場所に」
『!!…は…い……』
「ああああもう、だからそんなに泣かないで?…中原君、君分かっててこの子にこんなこと言わせたでしょ?」
「手前が隠しもしてねえから、蝶なら気付くと思ったんだがな」
『……へ?』
