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第20章 家族というもの


「やっぱり気付いてなかったか…ほら言ってやれよトウェイン、折角頑張ってお願いしたんだぞ?俺の蝶が」

「君散々僕に譲らないと思ったら…結果が分かってるんなら教えてあげれば良かったじゃないか」

『…?さっきから何話して……』

「!…はぁ……あのね?蝶ちゃん…僕、今絶賛引越しの準備中。…気付かれたくなくて確かに大事な書類とかは隠したけど…気付かなかった?横浜の物件の資料…いっぱいあったでしょ」

私や中也が最初にお邪魔していたのは、書斎のような…本や資料が沢山並んだ、しかしトウェインさんが何かを執筆するような、そんな部屋。

トウェインさんに会えたことが嬉しくて、それしか頭になくて全然周りを見ていなかった。

『物件の…資料……』

「………僕、近い内に横浜に引っ越すよ?」

本当はサプライズのつもりだったんだけどね、と付け足して、困り眉になってトウェインさんは私に微笑みかける。

『ほん、と…?本当…?』

「うん、ほん…っっ!!?ちょっ、蝶ちゃんその格好で抱きつかないで!!?」

『トウェインさん横浜に住むの!?ずっと!?…って、お仕事とかは!?お金とか…他の家族の人とかもどう「ストップ!ストップ!!」…?』

「お、お金も仕事も、そのへんはボスがあれだから心配いらないの!ね!?家族なんかも僕もう独り立ちしてるし…」

一瞬、言おうか躊躇ったのか口を閉じてしまったトウェインさん。
しかし、すぐにまたヘラリと笑ってから、トウェインさんは話を続けた。

「僕さ、普通に両親もいて…兄弟も他に四人いて、その下から二番目の人間っていう、普通に幸せな人間なんだけどね?…父親も母親も…兄も弟も、全員もうこっちで亡くなってるんだ」

『え…』

「…うん、そういうこと。だから自由なんだよね…はっきり言って僕も蝶ちゃんの近くにいたいし、こっちの地にそこまで未練があるわけでもないし……何より、一緒にいたいって思える人達と一緒にいられた方が楽しいじゃん」

知らなかった。
この人の家族が、全員もういなかったなんてこと。

それほどまでに、この人は太陽みたいに明るい人だから。

全然分からなかった。
だって、家族の話なんか一度も…

「…手前の家族事情はポートマフィアも探偵社も、知ってるやつは知ってる…なんなら、組合やめてうちに来たっていいんだぜ?」

「!……考えとこうかな?」
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