第20章 家族というもの
「分かってる、他の誰より俺が知ってる。蝶だけじゃない…お前は生まれてからずっと、周りに利用されてきただけだ。ちゃんと知ってる……知らねぇ奴には吠えさせておけばいい。ただ、お前にそいつらがなにかしようもんなら…そん時は俺が護ってやるから」
『!!…中也さん、が……?ほんと?…きて、くれる……?』
「勿論だ…何もされてなくても、お前が苦しい時にはそばに居てやるよ。今みてぇに思いっきり泣けばいい…親も家族も恋人も、そんなもんだろ?ちいせぇ事でも、ちゃんとお前が来た時には受け入れてやるよ」
『…捨てない……?』
「お前が下らねぇこと考えさえしなけりゃな…俺の付けた名前を捨てでもしてみろ、手前一生かけて俺が飼い殺してやるからな」
……なんだ、それをしたところで捨てないんじゃない。
さっき一緒にいたくないなんて言ったくせに。
結局はずっとそばに置いておくんじゃない。
『それ…結局一生一緒にいることになってます』
「……普通反抗するだろそこは。お前本気出せば俺からくらい余裕で逃げれんだろ」
『…捨てられるなら……飼い殺される方が全然いい』
「馬鹿、本気でいつか俺がおかしくなったらどうすんだよ。…まあ、でも今日は仕置な?蝶」
『ッ!?…あ、あのッ…!?』
耳にキスして呟かれる。
不意打ちだった。
とっくに警戒なんかしていなかったのに…こんなところでくるなんて。
「お望み通り、首輪でもつけて可愛がってやるよ…お前はどうやら、“そういう”性癖はあるらしいしなぁ?」
『へ…ッ、ぁ……っ』
人差し指で唇を開けられて、舌の先に焦れったく触れられる。
「ほら、もう興奮し始めてる…うちの仔猫は飼い主の指を舐めちゃあくれねえのか?」
『あ…ッ…ん………ん、っ…は…』
「……可愛く舐めてくれんじゃねえか、蝶」
『ひッ…ぅ………、っん…んぁ…』
頭を撫でられて、それにすら感じて、本当に飼われてしまった猫のように…しかしどこかいやらしく、ただ言われるままに舌を動かした。
「…俺に泣きつくの、恥ずかしい?」
『…っぁ……ん、ん…』
「………俺が一緒にいても寂しいと思うことがあるのは、当然のことだぞ……人間として」
『!!!…ちゅぅらは……ッ?』
「…咥えながら喋るの禁止。……けど、今日はちゃんと泣けたから…昨日と違って欲しいものなんでもやるよ」
