第1章 蝶と白
「ねえ、皆?話途中で遮られたからもっかい言うけどさ?“中間テスト”あるし、そろそろ帰らない?」
『ちゅ、うかんテスト…!!』
嵌められた。
そうか、ちゅーやさんではなくてちゅーかんテストか!!
「あ!」
「そうだった!ヤバイ!」
赤羽君の最もな意見に皆焦りを取り戻したのか、直ぐに帰っていった。
そしてポツンと取り残される私と赤羽君。
先程の会話で、男子陣も帰ってしまったらしい。
「……で、白石さん?話戻すんだけどさ。」
『何よ、どこまで戻すつもり?』
「え?勿論“ちゅーやさん”のとこ。」
『や、やっぱりそれ!絶対言わないでよ!?お願いだから!』
勿論、ポートマフィアの情報が出回るという事態も考慮してのことだが、それ以上に私が恥ずかしい。
それに、
『__それに、中也さんだって、もう私の事なんか忘れちゃってるかもしれないし?』
「え?何で?」
『赤羽君、知ってるよね?私が元ポートマフィアだって事。…私、別に探偵社に入る為に抜けたわけじゃないんだよ?』
「確かに、言われてみればそうだよね。そんなに中也さんとやらの事が好きなのに、わざわざ自分から離れるなんて考えにくいし。」
そう。
私が中也さんから離れるだなんてこと、ありえない。
そして彼も同じく、私を一人で自分の目の届かない位置に置くこともしない。
『私はね、四年位前に、とある組織に拉致されたの。私の能力を目当てにして。』
能力というのは、再生能力の方。
『ちょっと嫌なもの見せるけど、見ててね。』
ペンケースからカッターを取り出し、左手の甲を切りつけた。
「ちょっと!?何して…え?」
赤羽君は血相を変えて驚いていたが、今度は別のものに驚いている。
『うん、こっちの、再生能力を目当てにされて。で、数年間監禁されてたところ、武装探偵社に助けられて社員になった。』
「成程?…つまり、横浜から帰ってくる時の太宰さん達の反応からして、さっきの血は、治療みたいなものなんだ?」
『察しが良すぎてびっくりだよ。まあ、そんなところ。誰かが怪我をしても、私がそれを肩代わりすれば怪我人なんていないも同然なんだし。』
中也さんの見てるとこなんかじゃ、あの時以来、絶対使わせてもらえなかったけど。
『まあ、これだけ離れてれば、私の事なんて忘れちゃってても不思議じゃないんだよ。』