第20章 家族というもの
「…で、なんで俺に会いたくなかったんだよお前?まあだいたい想像はつくが」
『……』
「ほらそうやってすぐまた思いつめて…俺が今怒ってるようにでも見えんのかお前には?」
『…中也さん困らせるから……』
「まぁたんな事ばっか考えて……お前それだと自分が困ってんじゃねえか?本末転倒だぞそれ、寧ろお前が困ってる方が俺は困る」
相変わらず私に言い聞かせるのが上手い。
そう言われてしまっては、下手に遠慮をする道も塞がれる上にちゃんと話すしか選択肢がない。
「………んじゃ今回は俺が怒ってやろう」
『!…え……』
「“手前”、また糞太宰の奴の臭い付けて帰ってきやがったからな…考慮してやろうとは思ってたんだが……」
『ちょ…っ、まッ……!?』
路地で手を繋いで移動している真っ最中。
そんな中で、細い細い路地裏で。
目を細めて私を建物の壁に押し付ける中也……怒ってる割には背中に手を挟んで痛くないように配慮されてしまっているのだけれど。
「ケーキの約束はまた今度だ、今日はもう食っただろ立原と…んで?何にまだんな悩んでがんだよ。零は死んだ…俺とお前でちゃんと殺した。手前は誰だ?俺は零を肯定する人間ではあるが…あいつと恋人になった覚えも、家族になった覚えもねぇぞ」
『!!………いや…でも……』
「…でもじゃねえ、質問に答えろ。手前は誰だ?名乗る名前なんか無かったってのか?……それなら流石に俺も怒るし…そんな奴とは“一緒にいたくねぇ”」
『え…____』
言われた途端に呼吸が止まりそうになった。
息をすることも忘れて、目を大きく見開いて脱力して、そのまま思考が停止する。
初めて、言われた…前置きとして怒ると宣言されはしたけれど。
初めてこの人から…この人の口から。
一緒にいたくないなんて言われてしまった…ううん、言わせてしまった。
「……どうなんだよ」
『ぁ…あ……っ、ど、うって…ッ…』
身の毛がよだって…寒気がおさまらない。
足に力も入らないし、目の前の人物から発せられる声に反応するのに精一杯。
もっと他に考えるべきことがあるはずなのに。
なのに、それなのに今、生きてきた中で信じたくなかった言葉を耳にして。
「…震えてんぞ……んな覚悟もしてねえのに捨てようとしてやがったのか?今の自分を」
『捨て…ッ…、?……中也、さ…ん…捨、て……ちゃ……っ』
