第20章 家族というもの
「……銀がこんなに怒るなんて…それも手まで…」
初めて見た、と言わんばかりの樋口さん。
その気持ちは理解出来る…だって私も初めて見るから。
確かに、銀さんがポートマフィアに所属してからずっとの付き合いではあるけれど。
「…誰よりも優しい、こんなに人間らしい思いやりに溢れた女の子を泣かせるような人…最低です。貴方はこの子のことをそんな呼び名で呼びますが…………何も知らないでそんな不当な扱いばかりをするような人の方が、人殺しよりもよっぽど心のない人間ですよ」
「…人殺しよりも……?」
「そーいうこった」
『あ…え……は…っ、?…!?』
突如、建物の屋上から響いた声。
それから、何故か、今この場にいるはずのない人が地面まで超速で着地してくる。
私と花袋さんの間に入るようにして。
「……泣きそうな顔んなってんぞ蝶、まだ俺来たばっかり」
『………な…んで…?』
「あ?なんでって…察しろそこは。………んで、うちの蝶にいらねえ文句ばっか付けてくれてやがったのは手前か…命拾いしたなあ?それでこいつに手でも出しててみろ…手前はこの俺が直々に処刑してやっからよぉ」
「!?ポートマフィアの中原中也…!!?」
どうやらそこも知っているらしい。
「見たところ探偵社の情報屋ってとこかぁ?手前殺し屋に恨みでもあんのかよ」
「恨みなどではなく、こちらの女性に殺し屋が…って、元ポートマフィアの……あれ…」
頭の中を整理したのか、ようやく気が付いたらしい。
花袋さんは銀さんの方を向いて、焦ったように口にした。
「ま…まさか、零はポートマフィアの……!?」
「……あまりそうやって呼ばないでやってくれ花袋、流石に白石に悪すぎるぞ…情報屋が少しの情報だけを頼りに動いてどうするんだ、他にもまだお前の知らない情報だってあるだろう?」
「…それは……」
こちらに目線を向けられて、思わずそれに中也の上着をキュ、と握った。
心臓が掴まれたような感覚だ…呼ばれるだけで、自分が嫌になってくる。
「……すまない、ことをした…のはまあ、分かった。…しかしどうして君は、その…そんなにも姿が瓜二つなんだ?確かに零よりもかなり年が下な気もするが」
『!…そ、そういう能力……です』
「…………そうか」
『…中也…さん、あの……け、ケーキ食べに行かない?久しぶりに』
「あ?……ああ」
