第20章 家族というもの
走って、走って…人の少ない路地へと誘導していく。
だから能力はまだ使わない…のだけれど。
「…………ッ!?姐さ…!!?」
珍しく、銀さんが目を見開いて本気で焦り始めた。
それからどんどん逃げるスピードは増していき、暗殺専門者の本気の逃げが始まる。
『姐さんって…えっ、まさか紅葉さん!?』
「ち、違…ッ!?」
そして、突如信号機が全て赤に変わり、車が混雑して渡れなくなる横断歩道。
しかしそれによって私の中である仮説が生まれ、私を追ってくる犯人に目星が着いた。
ああそっか、私狙いなんだ。
それなら話が早い、まとめて一緒に移動させてやる。
目的が私の方だと分かった以上、外で追いかけっこをするよりも、能力でとっととどこかへ連れ込んでしまう方が早い。
相手は武器を持っているわけではない事だし。
「…あ、信号が……って、蝶ちゃん?その…手…?」
『銀さんごめん、ちょっと計画変更!こっちから問いただしに行く』
「それってまさか移動し____」
「「「んな…ッ!!!?」」」
銀さんが言い終わる瞬間にその人物……花袋さんの元へと移動した。
視界の端に捉えされすれば、扉を造らずとも飛べるから。
『…さっきから私に殺気ばっかり向けてるの、貴方ですよね?何もしないですからとっととやめていただけませんかそんな事』
それに国木田さんや敦さんまで。
花袋さんの後ろの二人に顔を向ける。
「い、いやこれには事情が…!!」
「そ、そうなんだよ!!……って、あれ!?ここどこ!?樋口さんは!!?」
『えっ、樋口さんって……!?銀さん、まさかさっきの“姐さん”って!?』
気がついた時にはその樋口さんが、自力で居場所を見つけて走ってきた。
物凄い形相で、執念深そうに私を…否、私の隣の銀さんを狙って。
「芥川先輩は私が…守る……!!!」
『樋口さん!?ちょっ、芥川先輩って…!!!』
「姐さん、誤解で「止めぬかぁ!!!!」!?」
しかし、私が走って向かってくる樋口さんを止めるまでもなく、花袋さんの口によってそれは阻まれる。
え、何してるのあの人、そんなに私を自力で仕留めたい?
あれ、なんかマフィア脳になってきた、仕留める必要ないよねよくよく考えてみればさあ。
「麗しの黒髪の撫子…!!そのお方の傍に、何故貴様のような世界一の殺し屋がいる!!?」
『!!…?』
