第20章 家族というもの
『立原はさ、怖くないの?私のこと』
「あ?なんで敵意も何もねぇ奴に怖がらなくちゃならねえんだよ?」
『…私が零でも、怖くないの?なんで?』
「なんでって……お前…………だって、お前ただの白石蝶じゃねえか?」
『………あ、っそ…』
「…まぁた誰かに何か言われたか?」
ちょっとだけ、嬉しかった、なんて。
そんなこと絶対言ってあげない。
『…ううん。なんでも…気になっただけ』
「そうか……何、心配せずとも、お前に頼み込まれたって俺はお前の親友辞めてやらねえよ」
ポフ、と小さな子供を落ち着かせるように撫でる手。
立原にそうされるのはほかの人よりも新鮮で。
まだ、なんか変な感じ。
目を見開いて固まっていると、今度は困ったように微笑まれた。
「なんだよ…親友兼お師匠さんが辛いの、見て見ぬ振り出来ねえよ」
『……立原…私さ…』
「ん?どうした?」
____辛いなんて言う権利、あるのかなって。
悲しいなんて…寂しいなんて。
そんなこと言う権利。
そんなこと言って、許されるような人間なのかなって。
素直にそう思った。
普通の人からしてみたら、あんな調子…きっとあれが普通の反応。
だって、それなりの事を私はしてきてしまったのだから。
「んなもん、権利も何もあるかよ」
『…?』
「権利なんかが与えられるようなもんじゃねえだろ?そういうの…お前が辛いんなら辛いし、悲しいなら悲しい……泣きてぇなら泣きゃあいい。それでいいだろ…人間なんだから」
『……人間…って言っても「違うか?」…』
馬鹿はたまに、こういう無理くりな馬鹿なことを言い始める。
だけど実は、こういうのが意外と私の涙腺を緩めやすくて。
それでも意地を張って、泣いてなんかやるもんかって変な対抗心を燃やして。
『…シスコンのところ行ってくる』
「もう行くのかよ?思ってたより早ぇな?」
『い、いいでしょ別に……美味しかった、ありがと』
「おう、またいつでも『けど!!!』?」
グチャグチャになりそうな顔を見せるのが嫌で、立原の方を向いて、偉そうに大きな態度で言ってやる。
『ち、っ…中也ならあとはちみつも入れてくれるんだからね!?もっともっと愛情注いでくれてもっと美味しくなるんだから!!……じゃっ…!!』
捨て台詞。
だっさいなぁ…
「……ですって、中原さん」
「…」
