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第20章 家族というもの


銀さんはクリーニング屋に仕事の服を取りに行こうとしていたらしく、そこには芥川さんの分もあるだろうということから、私も手伝う事にした。

別に手伝うまでに至らなくてもいいのかもしれないのだけれど…気が紛れる方がいい。

今は、何となくこちら側の人と一緒にいる方が、落ち着ける。

「ありがとう…わざわざ。どうせなら、兄さんと三人でどこか行く?」

『芥川さんと…三人で…?……って、芥川さんって呼ぶのも今更ながらおかしな話ですよね』

つい苦笑いになると、銀さんがクス、と微笑んだ。

「蝶ちゃんに下の名前で呼んでもらえれば、兄さんも嬉しいと思う」

『!…嬉しい……?…私なんか、相手に?』

「え…?」

『……い、え…なんでも』

つくづく思う。
本当に、こちら側の人達はどうしてそんな変わった人が多いのか。

…龍之介さん、か。
呼んでみようかな…嫌じゃ、ないかな。

世界中で忌み嫌われる、こんな私に名前を呼ばれても。

「………あ、そういえば今日朝から立原が蝶ちゃんに会いたがってたような…」

『!た、立原が?なんで…?』

「え?…えっと……そう、甘い物!なんか衝動的に食べさせたいなーって…行ってみたらどうかな?まだ兄さんがくるまで時間あるし」

どこか様子がおかしく見えもするけれど、立原が何か嫌がらせしようと目論んだことではないだろう…そんなことだとすれば銀さんが私に提案なんかしてこない。

それだけに、銀さんからの提案は珍しいので、私としても興味がわく。

『立原にしては気が利いてる…銀さんは?まだ外で用事?無かったら一緒に「え、ええ私はまだ少し…それにほら、今日なら中原さんもいたかもしれないし」あ……うん…行ってみる』

あんまり今は嬉しくない。
だってバレちゃうんだもの、会っちゃったら。

「じゃあ、また頃合が良くなったら…兄さんにも伝えておくから」

『…はい!じゃあ、たっぷり立原にせがんできますね!』

立原はこういう時に気が楽だ。
黙ってって言ったらすぐ聞くし、何話しても多分大丈夫だし。

……あれ、なんで私、中也に言うのは怖がる癖してそこにはこんなに強気でいられるんだろう。

「うん、じゃあまた後で」

銀さんに手を振ってから、なんとなく気分的に人目のあるところで能力を使いたくなくて、駆け足でポートマフィアの拠点へと駆けていった。
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