第20章 家族というもの
ああ、そういう。
なんだ、機械に強いだけじゃなくて、本当に情報屋もやってるんだこの人。
へえ…
「!!花袋、その話は____」
『なぁに?…そうして欲しいの?』
「「「!!?」」」
思わず空気が冷たくなる。
あんまり好きじゃないのよその呼び名…それも初対面でそんな言い方、酷いじゃない。
酷くなるくらいに行いが悪かった自分のせいもあるのかもしれないけれど。
目を細めて花袋さんの傍に瞬時に移動して目を合わせれば、誰も動くことができないまま、花袋さんが怯えるばかり。
………つまらない。
まあこんなもんか、人間って。
中也やトウェインさん…ひいては烏間先生あたりが寛大過ぎただけで。
普通の反応としてはこうなのだろう。
無理矢理掴んだ胸倉からパッと手を離して、少しだけ冷静になって国木田さんの方に顔を向ける。
『……多分、私がいたらお仕事になりませんから…ここら辺で失礼してもいいですか、国木田さん』
「は…お、おい白石!?まだ紹介も何も…」
『どうせ国木田さんがいますし、その方情報屋さんでしょう?十分ですって…じゃあお邪魔しました。また捜査に行き詰まりでもしたら呼んでください』
「え……ええ!?蝶ちゃん!!?」
後ろ手にひらひらと手を振ってから、スタスタ歩いてその場から遠のいていく。
あんまり深入りはするべきじゃあない。
最初から頭の中に結論がある人は、苦手だ。
…出てきたはいいけど、一応敦さんの様子見も任されてるしなあ今回は。
どうしよう、学校に行く予定時刻よりも遥かに早いし。
なんて考えながら大通りに出たところ。
見知った人物を視界に捉える。
それに少しだけ胸を高鳴らせ、その人物の元目掛けて足取りを軽くして駆けていく。
『…っ、銀さん!!』
「!?……ッ、え…蝶ちゃん…!!?ど、どうしてこんな時間にここに…?」
髪を下ろしてマスクも外して、美人さんが引き立つ格好になった銀さんは顔を赤らめて私を見る。
『ん~…ちょっと、お仕事のお手伝いで。……でももうほとんど用済みみたいなものなんで、出てきちゃいました!』
殺しにでも来たってのか…あの零だろう。
先程言われた言葉が脳裏に過ぎるも、それを悟られぬように笑顔を繕って普通に接する。
……やっぱり向いてないのかな、私。
“こっち”の方が、よっぽど合ってる職業なのかな。
