第20章 家族というもの
今日は朝から探偵社のお仕事…というよりは、紹介したい相手がいるということで、国木田さんに横浜に留まるよう告げられている。
私と…後は、敦さんと。
『紹介したい人って…』
「ああ。白石には何度か話したことが無かったか?電子機器を自在に操る事の出来る異能力者がいると」
『あ、聞いたことがあるような…?』
「いい機械だし、会ってみるのもいいんじゃないかと思ってな…俺と敦は仕事でそいつの力を借りたくて、これから会いに行くところなんだ」
成程、鏡花ちゃんは今別件で動いてるし、そういうことか。
確かに探偵社の人間である以上、ちゃんと同じ職場の人間の顔は覚えておくべきであろう。
事務所を出てから連れられたアパートの階段を登りながら、しかしここで一つの疑問がわく。
仕事以外ででもよろしくする機会はあっても良かったはずなのでは…?
敦さんも同様のことを思っているのか、私と顔を見合わせて首を傾げる。
そしてその人の家の前まで着くと、国木田さんがくるりとこちらを向いて、私と目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「白石…何があっても落ち着くようにな。悪い奴ではないんだが……奴は女性が物凄く苦手なんだ」
『へ……?は、はい?』
「国木田さん、まさか蝶ちゃんともまだ会えてない理由って…?」
「…そういうことだ。いいか、入るぞ」
国木田さんがインターホンを鳴らす。
するとそれに応答した相手は男の人…所謂引きこもりという状態にある方であるらしいのだけれど、どうやら国木田さんとは気のおけない間柄ではあるらしい。
玄関のロックが解除されるのと同時に、国木田さんが玄関を閉めさせまいと先手を打って足を挟む……そんなに慎重にならないといけない人なのだろうか。
「花袋…仕事だ。頼みがある」
「…?知らない顔だな」
「ん?…ああ、こいつは探偵社の新人の、中島あ「うわあああああ!!!!?」!?どうした花袋!?」
一瞬、私と目が合った瞬間に、花袋と呼ばれる男性は後ろに仰け反って腰を抜かしてしまった。
見ると怯えているようで…ああそうか、この人女の人が苦手なんだっけ。
なんて思っていたのも束の間の事。
「な、っ…なな、なんでそんな人間が…!?ここに何の用だ!!?俺を殺しにでも来たってのか!!!」
『…!どういう…』
「そこにいるのは…っ、あの零だろう!!!?」
