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第20章 家族というもの


『…』

「……機嫌直してくれって蝶、昨日のは『ご馳走様でした』聞く気なしですってかこの野郎」

『………だって…最後にキスしてくれなかったもん』

朝になって朝食を食べ、ご機嫌斜めな蝶を前に、彼女からの思いもよらぬ発言に目を点にする。

え、そこっすか?
もうちょっと他に色々痛いところを突かれるかと思えば…えっ、それだけっすか?

「…そこ?」

『………普段寝る時だってちゃんとしてくれるのに』

「お前可愛いな?」

『だから何なのよそれ!?中也嫌い!!』

やばい、可愛いこいつ。
本当猫みてぇ。

「言ってくれりゃいくらでもしてやんのに…お前そんなに好きだったのかよ?んな事で怒ってるとか」

『言ったら朝までするじゃない!?』

「お前に言われるんなら何でも守ってやんのによ?」

『な…、ま、またそんなこと言って……ッ…』

プシュゥ、と煙を立てながら、両手を頬に添えて顔を真っ赤にさせて黙り込んでしまった。

ダメだ可愛い、クソ可愛いこいつ。

「なんて顔してやがんだよ…大丈夫かそんなんで?結婚したらもうこの生活から逃がしてやらねえからな?お前」

『結こ…!!?…!!!?♡』

あ、今かんっぜんにデレた。
わっかりやすいなこいつの顔、すぐ顔に出る。

お得意の演技スキルはどうしたよ。

普段ならそっちが俺にやれ結婚だのやれ旦那だの迫ってくるくせに。

「なんならダーリンとでも呼んでみるか?」

『……ダー…………っ…中也、さん…ッ』

「おいなんで今元に戻した、やり直しだやり直し、前進するどころか戻ってんだろそれ」

『だ、だってそんな…』

「昨日のはあれだからな?仕方なく甘やかしてただけで今日はダメだぞさん付けは」

うっ…、と声を漏らす蝶。
その可愛らしさについつい許してしまいそうにもなるが、こいつの敬称を省いた名前呼びほど貴重なものはこの世にない。

カルマの野郎もいつの間にやら上手くやってやがったみたいだが、それでも蝶からの呼び方というものは本当に貴重なものなのであって。

「じゃああれな?今日から俺、俺の好きな呼び方してくれる奴がこの世で最も好きな『中也』早ぇわ!!」

変わり身の早さも可愛らしい。
俺にでも似たのだろうか、こういうところは。

『…あれ?でも待って?太宰さんも中也って呼んで「いい子な蝶にはお説教だな」え…』

誰に似たんだ全く
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