第20章 家族というもの
「あれっ、中原君もう来てたんだ!早いね〜」
「あ?うるっせェ声かと思ったら手前かよ」
「ひっど!一番乗りだと思ったのにさ…今日多分人が凄いことになるだろうからと思って早めに来たんだけど」
下準備が整ったあたりで、外から聞こえてくる高らかな声。
トウェインさんだ。
『!もう来たの??』
「あ、蝶ちゃん!そうそう、昨日ネットでここのいい評判流されてた上に蝶ちゃんの事まで載っててさ…今日お客さんすごいと思うよ?僕走ってきたけど、後ろに結構人が……」
トウェインさんの説明にえ、と驚く暇もなく、山の下からゾロゾロと列が出来ていく。
「ここ!!やった、一番の…三番か!!」
「見てみて、本当にいた!!おーい蝶ちゃん!!!」
『ふええ!!?』
トウェインさんの次にやって来たのはそろそろ見知ったお姉さん二名。
ケーキバイキングに行く度に出くわす、何かと縁のあるお姉様がた。
「中原さんもいらっしゃったんですか、流石ですね!」
「おお、まさか本当にすぐに来ちまうとは…会員番号の筆頭が最初に来ねえと示しがつかねえってもんだぜ」
「親バカクラブ恐るべし…」
「白石、お前の知り合いやべえな…今更だけど」
『……わ、わざわざこんなところまで…』
村松君の言う通りだ、今更だけれどやばい。
端的に言って頭がおかしい、愛だけでなせる技じゃない。
さらに人は集まり、みるみるうちに出来る長蛇の列。
そして列ができ始めて少し経ってから、他の担当の子達も投稿し始める。
「ね、ねえこれ何事!?テレビまで来てたよ!?」
「情報の発信源を見てみますと…この方のブログの書き込みが、大きな反響を呼んでいるそうです」
『サカイ…ユウジ?』
「あ、南の島で渚に惚れたっていう…昨日来てたもんね?」
南の島で女装していた渚君に一目惚れしたお金持ちのお坊ちゃんらしい。
なんでもその子は小さい頃から環境の影響でいいものを食べており、味は信頼性抜群の有名なグルメブロガーなんだとか。
「それとこれ!蝶ちゃんとこの…これ書き込んでるのもあの子じゃん!!中原さんじゃなかったんだ!?」
「蝶がそういう手は使いたくねえからやめてくれって頼んできてたからな…まあ、結局有名になっちまったみてえだが」
想像以上に凄いことになってしまった、いいのだろうかこんなので。
「はいはい、店開けるわよ!」