第20章 家族というもの
中也の車に乗せられ、お互い顔を直視せずに目的地に到着する。
到着した場所はといえば、まだ私がポートマフィアで仕事をしていた頃に見た事のある、ポートマフィアの提携している…
『ホテル…?』
「……そういう事、スる用のな…主に建てられた目的はまあ、仕事用なわけなんだが…個人でも使えるわけなんだわ、幹部にもなれば」
使う時なんか一生来なぇと思ってたけどな。
そう言った中也のおかげで思い出した。
確か、色々と提携企業の整理や状況把握をしないといけない機会があって、そういう資料を色々整理したり作成したりしてる時に、ここのお店の資料について聞こうとしたら目の前で破り捨てられたんだ。
…まさかそんな風に誤魔化されたこと今まで割とあった……?
『…そんなホテル、あるんだ……お仕事で使ったこと、あるの…?』
「あるわけねえだろ、こんな所に連れ込むよか前にとっとと殺して情報見つけて帰るぞ俺は…来るのも利用すんのも初めてだ」
フロントに人はおらず、しかしICカードと指紋認証によって、部屋まで誰ともすれ違わずに入っていくことが出来た。
入った部屋は一見普通に宿泊用のホテルなのだけれど…見渡して見たところで、中也の言っていた“いっぱい”の意味がわかった気がする。
今日本気だこの人、本気で私のことおかしくする気だ。
自動販売機や、電話の近くにあるメニューなんかを見てみても…そういう事をするために使うようなものが頼めるようになっているどころか、そういう事に使うのかどうかさえ怪しいようなものまで販売されている。
『ち、ちゅうや…さん……?そ、の…ど、どれ…使うのかなぁ……なんて……聞いていい、ですか』
「どれって…どれか気に入ったもんでもあったのか?」
『へあ!!?そ、そんなことないです!!!!』
「…そうか。それなら気に入るもんも分からねえし、試していくしかねえなぁ……俺の仔猫ちゃんよ?」
中也の放った爆弾に目が点になり、嫌な汗が流れ始める。
待って、今なんて言ったこの人?ねえ?
『た、試してい、く…?え?……あ、の…?』
精一杯にこりと笑ってみせるも、中也が目を開いて私ににやりと微笑みかけたところで、何かを察した。
「おう、これ“全部”。試してお前が好きなもんで……な?」
『ひぇ…ッ!!?』
小さな悲鳴と共に姿も元に戻り、長い長い夜の時間が始まった。