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第20章 家族というもの


支度しろ。
そう言われて、私はすぐに疑問を抱いた。
だって、外から戻ってきたばかりなのになんで支度?
出来てるようなものじゃない…って。

「お前、今日やってただろ?能力使って見た目変えるやつ」

『へ?…あ、はい……それで…?』

「私服に着替えて、出来れば…そうだな、二十歳くらいの見た目に変えれるか」

『え、うん…?どこか行くの?』

「行く。お前にいっぱいシてやれるとこ」

言われてみるみる顔が熱くなって、けどそれを望んでる自分がいて、急いで着替えて姿を変えた。
そして部屋のドアを開け……ようとはするのだけれど、なんだか緊張する。

まだ、この姿で中也と話した事なんかないから。

少しだけ高くなった目線に、また少しふくよかになった胸部…それに髪だって。

私が仕事を始めてから切ろうとした時に必死になって止められるほどに中也から褒められた、髪。
また、こんなに伸びた。

「蝶?…終わったんならそろそろ行……って…………お前…」

『………は、ずかしい…です……あん、ま見ないで…下さい』

集中切れます、なんて可愛くない付け足しをするのに、目を見開いたまま中也はこちらを見ているばかり。

「…お、前……本当にこいつが恋人なんかでいいのか?勿体なくねえか、なあ?今からでももっといい男探した方がよくねえか、本気で」

『へ、変…で、ごめん……なさ、い…そ、その、私も久しぶりで………』

「……変じゃ、ねえよ全然…言い方、おかしいけど……一目惚れしたわまた。…俺以外の奴がいるところでその姿になんなよ、絶対……綺麗になっちまって…俺よりいい奴探さなくていいのかよ本当」

『!!…き、れい……?…嫌じゃ、ない?』

傍に駆け寄って、まだ私よりも背が高い中也の顔を覗き込む。
それでも、いつもと違って全然顔が近い…よく見える、中也の顔。

「ッ!!?…い、やじゃねえ……よ…」

しかし、そう言いつつもすぐに顔を逸らされる。

『…やっぱり、年寄りみたいに見えちゃった…?』

五歳一気に年取ったわけだし……何より髪が白いから余計に。

「違ぇよ…お前分からねえ?俺今すげえ緊張してんだよ、目の前にこんないい女がいて平然としてられるやつの方がどうかしてる………恥ずかしいから顔見れねえだけ」

いつもの癖でつい、だった。
けど、そんな風に言う赤くなった中也の表情こそ…
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